ひずみ・変形の抑制効果のある対策

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溶接構造物の溶接によるひずみ・変形の抑制に効果のある施工段階の対策を説明する。

設計段階

  • 溶接長の低減
  • 開先断面の低減(母材板厚の低減、開先角度の減少)
  • 連続すみ肉を断続すみ肉にするなど変形の少なくなる継手形状の選択
  • 表裏溶接量のバランスのとれた開先形状の選択
  • 裏側加熱の適用(T形すみ肉継手)
  • 変形を抑える補強材の配置
  • 変形が少なくなるような継手の配置
  • 変形を抑えるような構造の採用

施工段階

  • 溶接入熱の小さい溶接法の採用(レーザー溶接、電子ビーム溶接など)
  • 開先精度の向上
  • 逆ひずみ法の適用
  • 比溶着熱の小さい溶接法の選定(例:被覆アーク溶接よりもマグ溶接を選ぶ)
  • 過大脚長や過大余盛をなくす
  • 拘束ジグによる部材拘束の実施
  • 変形が少なくなるような積層方法、溶接順序の採用
  • 部材寸法精度の向上
  • 組立(取付)精度の向上
  • 材料の運搬、保管時の変形防止

詳細説明

溶接構造物において、溶接によるひずみや変形(歪み)を抑制するための施工段階の対策は、品質・精度・安全性を確保するうえで非常に重要です。以下に代表的で効果的な対策を施工段階別に紹介します。


✅ 1. 溶接順序・手順の工夫

  • 対称溶接:左右対称に溶接を進めることで、片寄った収縮力を相殺できます。
  • 交互溶接(戻り溶接):端から順にではなく、溶接位置を飛ばしながら行うことで、局部的な熱集中を防ぎます。
  • 段取り溶接(ブロックごとに溶接):構造物を複数のブロックに分けて溶接し、歪みを分散させる手法。

✅ 2. 仮付け溶接の適正化

  • 仮付けをしっかり行い、各部材の位置を正確に固定することで、本溶接時の変形を抑制できます。
  • 強度のある仮付け(タック溶接)を多点で行うことで、溶接収縮に対する拘束力が高まります。

✅ 3. 治具や固定具の使用

  • **専用治具(ジグ)**を使って部材を拘束することで、熱収縮による移動や反りを防止。
  • 強力なクランプや固定台を用いることも有効。

✅ 4. 反変形を与える(反り込み)

  • あらかじめ予測される変形に逆らう方向に曲げておく(反りを与える)ことで、最終的に狙い通りの形状になるよう調整します。

✅ 5. 予熱・後熱の管理

  • 予熱により急激な温度差を防ぎ、均一な加熱に。
  • 後熱や徐冷で冷却速度を調整し、残留応力の集中を緩和。

✅ 6. 小さい溶接ビード・断続溶接

  • 必要以上に大きなビード(溶接幅)を避ける。
  • 断続溶接(必要な場所だけ溶接)で、熱入力を抑制。

✅ 7. 溶接条件の最適化

  • 熱入力が高すぎると歪みやすくなるため、電流・電圧・速度のバランスを最適化する。
  • 低熱入力プロセス(例:TIGやMIGパルス)を使うのも有効。

✅ 8. 中間溶接・部分溶接の活用

  • 一度に全てを仕上げず、一部ずつ溶接して都度確認・修正する方法。

✅ 補足:設計段階での対策との連携も重要

  • 板厚をそろえる・溶接長を短くする・構造的対称性を考慮するなど、設計段階の工夫と合わせるとより効果的です。
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