| | 小電流 | 中電流 | 高電流 |
マグ溶接 | 炭酸ガス28%以上 | 短絡移行 | グロビュール移行 | グロビュール移行 |
炭酸ガス27%以下 | 短絡移行 | グロビュール移行 | スプレー移行 |
ミグ溶接 | | 短絡移行 | グロビュール移行 | スプレー移行 |
短絡移行:ワイヤの先端が母材に接触短絡して母材へ離脱し、その直後に再アークし、短絡・アークを繰り返す形態。
- グロビュール移行:大きい系の溶滴がワイヤ端から離脱する移行形態と、大塊となった溶滴がワイヤ方向へ押し上げられて不規則な挙動を呈しながらワイヤ端から離脱する移行形態との両者を包含する形態
- スプレー移行:ワイヤ径とほぼ等しい系の液滴がワイヤ径から離脱する移行形態と、ワイヤ径より小さい系の溶滴が離脱する移行形態との両者を包含する形態
特徴
- 短絡移行・グロビュール移行はスパッタが多い
- 短絡移行からグロビュール移行へ推移する電流値を臨海電流といい、その値はArへのCO2混合比率が多くなるほど大きくなる
- アルゴンに炭酸ガスを20%以上混合したガスをシールドガスに用いるマグ溶接では液滴移行は比較的安定になり、特に溶接電流池値を臨海電流 以上にすると、液滴はスプレー移行するようになる
詳細
溶接におけるシールドガスと液滴移行(溶滴移行)は、アーク溶接の品質や仕上がりに大きく影響します。
✅ シールドガスとは?
溶接中に発生するアークと溶融池を大気から保護するためのガスのこと。酸素・窒素などの有害ガスの混入を防ぐ役割があります。
🔶 主なシールドガスの種類と特徴
ガス種 | 用途・特徴 |
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アルゴン(Ar) | 化学的に不活性。TIGやMAGで使用。アークが安定しやすい。 |
炭酸ガス(CO₂) | 安価で深い溶け込みが得られるが、スパッタが多め。MAG溶接に使われる。 |
アルゴン+CO₂混合ガス | 例:Ar80% + CO₂20%。アークの安定とスパッタ低減のバランス。 |
ヘリウム(He) | 高温アークが得られ、厚板や高熱伝導材料向け。コストは高い。 |
✅ 液滴移行(溶滴移行)とは?
ワイヤから溶融した金属(溶滴)が溶融池に移動する現象。シールドガスや溶接電流・電圧によりそのモードが変わります。
🔶 主な溶滴移行モード(MAG溶接の場合)
モード | 特徴 | 発生条件 |
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短絡移行(ショートアーク) | ワイヤが溶融池と接触→短絡→金属移行。低電流・薄板向き。スパッタ多め。 | 低電流・CO₂多め |
グロビュール移行 | 大きな溶滴が重力で落下。アーク不安定。スパッタ多い。 | 中間条件 |
スプレー移行 | 微細な溶滴が連続してアーク中を飛ぶ。アークが安定し、スパッタ少。 | 高電流・Ar系ガス |
パルススプレー移行 | 電流を周期的に変化させて安定したスプレー移行を実現。薄板~中厚板向け。 | パルス制御電源使用 |
🔁 シールドガスと移行モードの関係(MAG溶接)
シールドガス | 主な移行モード | 特徴・用途 |
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100% CO₂ | 短絡・グロビュール移行 | 深い溶け込み、コスト◎、スパッタ多 |
Ar + CO₂混合 | スプレー・パルス移行 | 品質重視、スパッタ少、アーク安定 |
100% Ar(+He) | TIG・スプレー移行 | 高品質、酸化防止、制御性◎ |
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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シールドガスの目的 | アークと溶融金属を大気から保護する |
ガスの種類 | Ar、CO₂、Ar+CO₂混合、He など |
液滴移行の種類 | 短絡、グロビュール、スプレー、パルススプレー |
品質への影響 | アークの安定性、スパッタ、溶け込みに大きく関与 |
🔍 応用例(選定のポイント)
- 薄板・低コスト ⇒ 100% CO₂ + 短絡移行
- 厚板・高品質 ⇒ Ar+CO₂混合 + スプレー移行
- 精密・美観重視 ⇒ TIG + Ar100%
- 自動化・量産向け ⇒ パルス制御 + スプレー移行