炭素鋼のアーク溶接
- 炭素鋼のアーク溶接では、ブローホール抑制の為、溶融金属を大気から保護するとともに、脱酸元素を添加する必要がある。どのようにして大気から溶融金属を保護しているのか、また、脱酸元素をどのように溶融金属に添加しているかを示す
- 【被覆アーク溶接】
大気からの保護:アーク熱により被覆材を分解して発生させたガスを用いて溶融金属を大気から遮断する、かつ、生成した溶融スラグが溶融池を保護する
脱酸元素の添加:被覆材に脱酸元素(Fe-SiやFe-Mn)を添加する
- 【ソリッドワイヤを用いるマグ溶接】
大気からの保護:炭酸ガスまたは炭酸ガスとアルゴンの混合ガスでシールドし、溶接金属を保護する
脱酸元素の添加:あらかじめワイヤに脱酸元素を添加する
- 添加する脱酸元素の種類は、Si、Mn、Al、Ti等である
詳細
✅ 炭素鋼とは?
鉄に炭素(C)を主に添加した合金鋼で、強度と加工性のバランスが良い構造材料。炭素量により性質が変化します。
種類 | 炭素量(目安) | 特徴 |
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低炭素鋼 | ~0.25% | 溶接性◎、延性が高い |
中炭素鋼 | 0.25~0.6% | 強度◎、溶接時に割れ注意 |
高炭素鋼 | 0.6%以上 | 硬くて強いが、溶接は困難 |
🔧 アーク溶接とは?
電気アーク(放電)で金属を加熱・溶融して接合する溶接方法。主に以下の方式があります。
種類 | 特徴・用途 |
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被覆アーク溶接(SMAW) | 一般構造物に多用、簡便で屋外にも強い |
半自動溶接(MAG) | 量産・薄板に向く、作業効率が高い |
TIG溶接(GTAW) | 精密・美観重視の溶接に最適(パイプなど) |
🧪 炭素鋼アーク溶接のポイント
🔥 1. 溶接性
- 低炭素鋼(SS400など)は非常に溶接しやすく、初心者にも扱いやすい
- 中・高炭素鋼は割れやすいため、予熱や後熱処理が必要な場合あり
📉 2. 割れのリスクと対策
現象 | 原因 | 対策 |
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低温割れ | 水素、拘束、急冷 | 予熱、乾燥、低水素系棒使用 |
再熱割れ | 多層溶接中の再加熱 | 熱入力管理、低炭素材料使用 |
🧰 使用する溶接材料(例)
鋼種 | 一般的な溶接棒・ワイヤ |
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SS400 | E4303(酸化チタン系)、E4316/E4916(低水素系) |
S45C(中炭素鋼) | 低水素系(E7016など)+予熱必須 |
📐 注意点(炭素鋼溶接で重要な管理)
項目 | 説明 |
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予熱温度 | 中炭素鋼以上では100~250℃程度が目安 |
後熱処理 | 応力除去や靭性回復に有効 |
湿気対策 | 溶接棒は使用前に乾燥、母材は脱脂・除錆が重要 |
姿勢・技量 | 被覆アークでは姿勢による難易度差あり(下向きが最も簡単) |
🏗️ 主な用途
分野 | 使用例 |
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建築 | 柱、梁、鉄骨 |
土木 | 橋梁、水門、鋼管杭 |
車両 | シャーシ、車枠 |
機械設備 | フレーム、タンク、配管 |
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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材料 | 炭素鋼(SS400、S45Cなど) |
溶接法 | 被覆アーク、MAG、TIGなど |
難易度 | 炭素量が多いほど難易度・割れリスクが上昇 |
管理ポイント | 予熱、低水素溶接棒、乾燥、後熱、拘束防止 |