オーステナイト系ステンレス鋼SUS304
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304のアーク溶接
- 溶接時の熱影響部では約500-850℃に加熱される時間が長くなるほどCr炭化物が結晶粒界に析出し、粒界近郊のCr固溶濃度が低下するため、耐食性が劣化する
- 上記劣化が発生した場合、これを回復するためには、1000-1100℃に加熱し、析出した炭化物をオーステナイト中に固溶させた後、急冷する、いわゆる固有化(液体化)熱処理を施す
- 劣化を生じない、または最小限にするためには、
⇒溶接入熱を小さくする
⇒水冷しながら溶接し、Cr炭化物が析出しやすい鋭敏化温度域の冷却を早くする
⇒0.003%C以下の低炭素ステンレス鋼を使用する
⇒Ti(チタニウム)、Nb(ニオブ)などを添加した安定化ステンレス鋼を使用する
- 応力腐食割れは引張応力のもとで、塩素イオンの存在する環境中などにさらされた場合に発生する
詳細
SUS304は、ステンレス鋼の中で最も広く使われているオーステナイト系ステンレス鋼です。以下に詳しく、わかりやすく解説します。
✅ SUS304とは?
JIS規格におけるオーステナイト系ステンレス鋼の代表格で、耐食性・加工性・溶接性に優れる「万能型ステンレス」
🧪 化学成分(代表値)
元素 | 含有量(質量%) | 役割 |
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Cr(クロム) | 約18% | 不動態皮膜で耐食性を発揮 |
Ni(ニッケル) | 約8% | オーステナイト構造を安定化、靭性向上 |
C(炭素) | 0.08%以下 | 多すぎると耐食性が低下するため制限 |
Mn(マンガン) | ~2% | 脱酸・加工性補助 |
🔧 特徴
特性 | 内容 |
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耐食性◎ | 水・湿気・弱酸などに強い(屋内外とも使用可) |
加工性◎ | 曲げ・プレス・深絞り・切削などに適する |
溶接性◎ | 一般的なアーク溶接・TIG溶接に問題なし |
非磁性 | 冷間加工で弱磁性が出ることもあるが基本は非磁性 |
強度 | 一般構造用鋼よりは劣るが、構造材として十分 |
⚠️ 注意点(弱点)
注意点 | 内容 |
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塩素系に弱い | 次亜塩素酸や海水などでは孔食(ピット)が起きやすい |
高温長時間で粒界腐食のリスク | 特に炭素量が多い場合(対策:低炭素のSUS304L) |
価格が高め | 鉄鋼やアルミと比べるとコストが上がる |
🏗️ 主な用途
分野 | 用途例 |
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建築 | 手すり、外装パネル、ドア、屋根金具 |
家庭用品 | シンク、フライパン、ポット、包丁 |
食品設備 | タンク、パイプ、調理機器 |
医療 | 洗浄機、カート、棚 |
自動車 | マフラー、装飾モール |
✅ SUS304とSUS316の違い
項目 | SUS304 | SUS316(Mo添加) |
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耐食性 | 標準レベル | 塩水・薬品にも強い |
コスト | 安価 | やや高価 |
用途 | 一般産業・家庭向け | 海水環境・化学プラントなど |
✅ SUS304Lとは?
SUS304の低炭素タイプ(Carbon:0.03%以下)
特徴 | 内容 |
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粒界腐食に強い | 溶接後も耐食性を維持しやすい |
溶接部の耐久性が必要な場合に使用 | 食品設備・化学装置・圧力容器などで活躍 |
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | SUS304(18-8ステンレスとも) |
分類 | オーステナイト系ステンレス鋼 |
特徴 | 耐食・加工・溶接性に優れる万能鋼 |
用途 | 台所・建築・食品・医療・一般工業全般 |
代替 | SUS316(耐塩性アップ)、SUS304L(低炭素) |