- 原因①
開先面に付着した油、さび、水分など - 対策①
開先面の油、塗料、赤さび、水等を洗浄、研磨や加熱作業などで取り除く - 原因②
風によるシールドガスの乱れ - 対策②
衝立、シートなどで防風対策を行い、トーチ近傍の風速を低減する - 原因③
ノズル内スパッタ付着によるシールドガスの乱れ - 対策③
ノズル内面の清掃で付着したスパッタを除去する。なお、清掃時に併せてスパッタ付着防止剤を塗布するのが望ましい - 原因④
シールドガス流量の過不足によるシールド不良 - 対策④
適正なガス流量に是正する - 原因⑤
ノズル-母材間距離過大によるシールド不良 - 対策⑤
適正な距離に是正する - 原因⑥
過大アーク長によるシールド不良 - 対策⑥
適正なアーク長に是正する - 原因⑦
過大溶接速度 - 対策⑦
より低速度の条件にする - 原因⑧
ソリッドワイヤのさび - 対策⑧
ワイヤの保管でさびが発生しないようにする。さびが発生したワイヤは破棄する - 原因⑨
局所排気装置によるシールドガス流の乱れ - 対策⑨
局所排気装置の取り付け方法などを是正する
詳細説明
ソリッドワイヤを用いるMAG溶接(炭酸ガスまたは混合ガスシールドアーク溶接)施工中に発生する欠陥の中で、**ポロシティ(ブローホール)やピット(小さなクレーター状欠陥)**は、外観や内部品質に重大な影響を与える不具合です。以下にそれぞれの欠陥の発生原因を詳しく説明します。
🔶 ポロシティ(Porosity / ブローホール)
🔸【概要】
ポロシティとは、溶接金属中にガスが閉じ込められて形成される微細な気孔(空洞)です。外観に現れる場合は「ブローホール」とも呼ばれ、内部に分布する場合は超音波探傷などで検出されます。
🔸【主な発生原因】
原因分類 | 詳細内容 |
---|---|
母材表面の汚れ | 油、塗料、錆、水分などが母材に残っていると、溶接時にガスを発生させ、それが溶融金属に取り込まれ気孔となる。 |
ワイヤの表面汚染 | ワイヤに油分や水分が付着していると、アーク中でガス化し気孔になる。特に高湿度環境では吸湿が問題となる。 |
シールドガスの流量不適 | 過剰または不足した流量、不安定なガス供給(ボンベ残圧低下や配管漏れ)によって、アーク周囲のガス保護が不十分になり、酸素・窒素が混入して気孔が発生。 |
風・気流の影響 | 屋外や通風のある場所ではガスシールドが乱され、外気が侵入して気孔の原因になる。 |
トーチ角度の不適切 | トーチの角度が極端に前傾・後傾していると、アーク周囲のガス保護が不十分になり、外気混入が起こる。 |
アークの不安定 | 伸出し長が長すぎる、あるいは不安定な送給などでアークがばらつくと、ガス保護が不安定になり気孔ができやすい。 |
多層溶接時のスラグ・油残留 | 一層目の清掃が不十分なまま次層を施工すると、残留物からガスが発生し気孔になる。 |
湿気・結露 | 溶接材や母材が結露していると、水分が溶接時に蒸発して気孔となる。特に雨天後や冷間での作業に注意。 |
🔷 ピット(Pit)
🔸【概要】
ピットとは、ビード表面にできる小さなくぼみや穴状の欠陥で、外観上の不良として重要です。ピット自体は気孔ではないこともありますが、しばしばポロシティと関連します。
🔸【主な発生原因】
原因分類 | 詳細内容 |
---|---|
溶接終端処理の不適切 | アーク停止時の処理が雑だと、アーククレーター部に溶融金属が収まらず、くぼみ(ピット)が形成される。特にクレータークラックやガス巻き込みの原因にもなる。 |
トーチ移動停止時の乱れ | トーチを急に停止・離脱すると、溶融池が均一に固化せず、ピットやクレーターが残る。 |
ガス遮蔽の乱れ | 終端部でシールドガスが急に切れると、酸化やガス巻き込みが起きやすく、ピットが形成される。 |
冷却が早すぎる | 厚板や高熱伝導性母材では、冷却が早すぎると溶融池が収縮してピット状のへこみができやすい。 |
予熱不足・母材温度低下 | 溶接中に母材温度が低すぎると、溶融金属の流動性が悪くなり、ピットが残る。 |
✅ ポロシティ・ピットの対策(共通)
対策内容 | 説明 |
---|---|
溶接前の清掃徹底 | 母材・ワイヤ・開先内の油・水分・錆をしっかり除去する。ワイヤは清潔な状態で保管・使用する。 |
シールドガスの適正管理 | 適正流量(通常15〜25 L/min)を維持し、風防対策も行う。ホースや接続部の漏れ確認を徹底。 |
アーク操作の安定化 | トーチ角度や速度を安定させ、伸出長を規定内に保つ(例:15〜20mm)。アーク始終端の処理も丁寧に。 |
多層溶接では層間清掃を確実に | スラグや酸化物を除去してから次層を施工する。層間温度も管理する。 |
乾燥保管・予熱管理 | 溶接材料や母材を湿気から守り、必要に応じて予熱(例:50〜150℃)を施す。 |
クレーターフィル機能の活用 | 電源装置のクレーターフィルやクレーターダウン機能で終端部のピットを防止可能。 |