- レーザー切断は光エネルギーを用いた切断方法で、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、ファイバレーザが熱源として採用されている。 この中で、炭酸ガスレーザーは波長域から見れば赤外(遠赤外)域に位置する
- YAGレーザーでは、一般にファイバ伝送方式が採用される。これに対し、炭酸ガスレーザーではミラー伝送方式が採用されている
- 鋼板レーザー切断のアシストガスとしては、切断速度を向上する観点から酸素が主に用いられる
レーザー切断(Laser Cutting)は、高エネルギー密度のレーザー光を素材に集中照射して、加熱・溶融・蒸発させて切断する加工方法です。金属、プラスチック、紙、布など幅広い材料を、高精度・高速・非接触で加工できるため、自動車、電子機器、金属加工、建築、航空宇宙など多くの分野で活用されています。
🔍 レーザー切断の原理
レーザー光(通常はファイバーレーザーやCO₂レーザー)をレンズで一点に集光し、材料表面に照射することで瞬時に高温に達し、素材を局所的に溶かしたり蒸発させたりして切断します。このとき、補助ガス(酸素、窒素、空気など)を同時に噴出し、溶けた材料を吹き飛ばしながら切断を進めます。
🔧 主な切断方式と補助ガス
切断方式 | 補助ガス | 特徴 |
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熱酸化切断 | 酸素 | 酸素と反応して酸化熱が加わり、厚板にも対応。炭素鋼向け。 |
溶融切断(フュージョン) | 窒素 | 酸化を防ぎ、切断面がきれい。ステンレス、アルミに多用。 |
気化切断 | 空気など | 非金属や薄板で使用。切断幅が狭い。 |
✅ 特徴と利点
項目 | 内容 |
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高精度 | 数ミクロン単位の精度で切断可能。細かい輪郭や複雑な形状にも対応。 |
高速加工 | 板厚や材質にもよるが、数百 mm/s 〜 数 m/min の高速切断が可能。 |
変形が少ない | 熱影響が局所的で、材料全体の加熱がないため、歪みや変形が極小。 |
非接触加工 | 工具が直接材料に触れないため、摩耗や工具交換が不要。 |
幅広い材料対応 | 鉄、ステンレス、アルミ、銅、チタン、アクリル、木材、布などに対応可能。 |
自動化に最適 | CNC(数値制御)やCADデータと連携し、自動加工が容易。 |
🛠 適用例(産業別)
分野 | 主な用途例 |
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自動車 | ボディ部品、排気部品、電装部品の加工 |
電子機器 | 精密部品の基板加工、ケース穴あけ |
金属加工業 | 板金加工、パイプ切断、複雑形状の一体切断 |
医療機器 | ステンレス製の手術用器具の切断・加工 |
建築・インテリア | 金属看板、アートパネル、装飾部材などの自由形状切断 |
⚠️ 注意点・課題
課題項目 | 内容 |
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反射材の加工性 | アルミ・銅など高反射材はレーザーを反射しやすく、吸収効率が低い(対策:波長の選定やコーティング) |
初期投資が高い | レーザー装置本体や集塵機、冷却装置などの設備投資が必要 |
材料厚みに制限 | 薄板〜中厚板が得意だが、極厚板(30mm以上)は速度・品質が低下することもある |
安全管理が必要 | 強力な光と熱を使うため、レーザー防護メガネ・カバーなど安全対策が不可欠 |
📐 切断精度・切断幅の参考値(ファイバーレーザー)
材料 | 板厚(mm) | 切断幅(mm) | 加工速度(例) |
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SS400(鉄) | 1.0 | 約0.1〜0.15 | 約3000 mm/min |
SUS304(ステン) | 3.0 | 約0.2〜0.3 | 約2000 mm/min |
アルミ | 2.0 | 約0.15〜0.25 | 約2500 mm/min |
※ 装置出力やガス、レンズ条件によって異なります。
✅ まとめ
レーザー切断は、以下のような用途に非常に適しています:
- 高速・高精度が求められる加工
- 熱変形を避けたい場面
- 自動化や量産向きの生産ライン
- 多品種小ロット生産(試作・デザイン含む)