
ワイヤの種類 | シールドガス | 主な適用鋼種 | 引張強さ | シャルピー吸収エネルギー |
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YGW12 | 炭酸ガス | 軟鋼および 490N/㎟HT鋼 | 490-670Mpa | 27J(0℃)以上 |
YGW15 | 混合ガス (アルゴンと炭酸) | 軟鋼および 490N/㎟HT鋼 | 490-670Mpa | 47J(-20℃)以上 |
YGW18 | 炭酸ガス | 490M520および 4550N/㎟HT鋼 | 550-740Mpa | 70J(0℃)以上 |
詳細説明
溶接材料の中で、ワイヤ(溶加材)には、JIS規格に基づく記号で分類されたものが多くあります。特に「YGW」や「YTW」は炭素鋼・低合金鋼のアーク溶接用ワイヤの記号です。
🔷 JISにおけるワイヤの記号(概要)
- Y:溶接用ワイヤ(Welding wire)
- G:ガスシールドアーク溶接用(Gas shielded)
- T:被覆タイプのチューブワイヤ(Flux cored wire)
- W:ワイヤ(Wire)
- 数字:材質や用途によって分類される記号番号
🔶 YGW12(ソリッドワイヤ)
- 正式名称:JIS Z 3312 YGW12
- 種類:ソリッドワイヤ(ガスシールドアーク溶接用)
- 材質:炭素鋼用(軟鋼用)
- 主な成分:Mn、Siを含有(脱酸性を高めている)
- 適用溶接法:MAG溶接(CO₂またはAr+CO₂混合ガス)
- 特徴:
- スパッタが少なく、アーク安定性に優れる
- ポロシティ発生が少ない
- 用途:
- 一般構造物、建築構造、車両、機械部品などの中〜厚板溶接
- 高品質が求められる溶接(溶け込み性良好)
🔶 YGW15(ソリッドワイヤ)
- 正式名称:JIS Z 3312 YGW15
- 種類:ソリッドワイヤ(ガスシールドアーク溶接用)
- 材質:炭素鋼用(YGW12よりややシンプルな成分)
- 特徴:
- YGW12に比べて若干簡素な構成
- コストパフォーマンスに優れる
- 用途:
- 薄板〜中板の一般構造物の溶接
- 比較的安価な製品で使用される傾向
🔶 YTW18(フラックス入りワイヤ)
- 正式名称:JIS Z 3313 YTW18
- 種類:フラックス入りワイヤ(チューブタイプ)
- 構造:中に薬剤(フラックス)が充填された中空ワイヤ
- 適用溶接法:MAG溶接(ガスシールド必要)
- 特徴:
- スラグ生成型で、立向き・上向き溶接にも対応
- 溶け込みが深く、溶着金属の強度が高い
- 用途:
- 厚板、建築鉄骨、橋梁、重機、造船など高強度を求められる構造物の溶接
- マルチパス多層溶接に適する
🔸 YGW12・YGW15・YTW18の比較表
項目 | YGW12 | YGW15 | YTW18 |
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タイプ | ソリッドワイヤ | ソリッドワイヤ | フラックス入りワイヤ |
溶接法 | MAG | MAG | MAG |
適用板厚 | 中〜厚板 | 薄〜中板 | 厚板 |
アーク安定性 | 高い | 標準的 | 高い |
スラグ発生 | なし | なし | あり(除去必要) |
用途 | 一般・車両・建築 | 一般構造 | 重構造物・多層溶接 |
コスト | やや高 | 安価 | 中〜高 |
✅ 補足:その他の溶接材料の分類
溶接材料には以下のような種類があります:
材料 | 用途・特徴 |
---|---|
ソリッドワイヤ | 自動溶接、薄板、クリーンな外観向き。スラグがない。 |
フラックス入りワイヤ | 高溶け込み、多層・立向き溶接に強い。スラグあり。 |
被覆アーク溶接棒(例:E4313) | 手溶接に使用。屋外や現場施工に多用。 |
ステンレス・アルミ用ワイヤ | SUS304/316、Al-Mg系など材質に対応した専用材。 |
サブマージアーク用ワイヤ | 重構造物や厚板の高速溶接向け。 |