考察例
引張荷重Pが作用する十字すみ肉溶接継手の許容最大荷重を、解答手順に従って算出せよ。なお、すみ肉溶接は等脚長で脚長=サイズとし、各すみ肉継手の有効溶接長さは100mmとする。また、 許容引張応力は150N/㎟、許容せん断応力は許容引張応力の0.6倍で、1√2=0.7とする。

回答手順
- ①十字すみ肉継手の許容応力は、90N/㎟となる(すみ肉溶接の為にせん断応力を利用する)
- ②荷重は上下一対のすみ肉溶接継手により伝達されるので、強度計算に用いる合計有効溶接長さは、200mmとなる
- ③各すみ肉溶接部ののど厚は10×√2(0.7)⇒7mmとなる
- ④したがって、力を加える有効のど断面積は、1,400mmとなる
- ⑤許容最大荷重=有効のど断面積×許容応力である
- ⑥以上より、許容最大荷重=126,000N⇒126kNとなる
十字すみ肉溶接の許容最大荷重を求めるには、溶接部の強度計算が必要です。ここでは、基本的な手順と考え方を分かりやすく説明します。
計算の詳細
🔧【前提:十字すみ肉溶接とは?】
十字形に接合される2つの部材を、すみ肉溶接で接合したものです。溶接部分はL字型の溝を満たすように金属を盛って接合します。
📐【許容最大荷重の求め方:手順】
① 有効すみ肉断面積の算出
すみ肉溶接の有効断面積 AAA は、以下の式で求められます
A=a×L
- α:有効脚長(mm)
※通常、溶接の実脚長×0.707(45°三角形の高さ) - L:溶接長(mm)
※片面または両面で長さが変わります
② 許容せん断応力度の決定 Tα
材料と設計基準によりますが、以下が参考値です(例:SS400)
Tα=σy/√3⋅γm
- σy:母材の降伏強さ(例:245 MPa)
- γm:安全率(JISや設計基準で決まる。例:1.5)
③ 許容最大荷重 Pの算出
P=A⋅Ta=a⋅L⋅Ta
✅【具体例】
- 有効脚長 a=6 mm
- 溶接長 L=100 mm
- 許容せん断応力度 Ta=94 MPa
P=6×100×94=56,400 N=56.4 kN