引張試験

- 丸棒引張試験で測定される降伏比は、降伏応力/引張強さである
- 丸棒引張試験で測定される一様伸び(均一伸び)は、最大荷重時の公称ひずみ(JISではその塑性成分)である
- 許容引張応力:部材が許容できる引張応力度の値
- 許容せん断応力:部材が許容できるせん断応力の値。せん断応力は物体内部のある面と平行方向に、その面にすべらせるように作用する応力のこと
■ 溶接における引張試験とは
引張試験(Tensile Test)は、溶接された継手の機械的強度(主に引張強さ)を評価するための試験です。JIS Z 3111(溶接継手の引張試験方法)などの規格に基づき、溶接金属・母材・融合部の一体的な強度を数値として確認します。これは、構造物の設計強度を確保し、安全性や品質の確認に不可欠な検査手段です。
■ 試験の目的
- 溶接部が設計強度を満たしているかを確認する。
- 溶接の健全性(欠陥の有無や影響)を評価する。
- 母材、溶接金属、融合部のバランスを確認する。
- 溶接条件(電流・電圧・速度など)の妥当性を検証する。
■ 試験方法の概要
- 試験片の作製
溶接した母材から標準的な形状(例えば、丸棒型または板状型)の試験片を切り出し、研磨などで仕上げます。試験片には、溶接部が中央に位置するように配置されるのが基本です。 - 試験機による荷重の加圧
試験機に試験片を取り付け、一方向に引張力を加えて破断させることで、破断荷重と破断位置を測定します。 - 結果の評価
得られたデータから、以下のような機械的性質を評価します:
- 引張強さ(最大応力):試験片が破断するまでに耐えた最大の応力。
- 伸び(破断後の長さ変化):塑性変形の程度を示す。
- 破断位置:母材側、溶接金属側、融合部など。
■ 評価基準と合否判定
- 溶接部が母材と同等またはそれ以上の強度を有していることが理想です。
- 溶接金属での破断があった場合でも、所定の基準強度以上であれば合格とされることがあります。
- 融合部での破断や極端な伸び不足は、**溶接欠陥(例:未溶融、割れ、スラグ巻込み)**の可能性があると判断されます。
■ 使用される規格
- JIS Z 3111:溶接継手の引張試験方法
- JIS Z 2201:金属材料の引張試験方法
- AWS D1.1(米国溶接学会)など、国際規格もあり
■ 引張試験の意義と補足
引張試験は、破壊が生じるまでの強度を明確に数値で示すため、他の非破壊検査では得られない構造的な健全性の証明が可能です。ただし、試験自体が破壊を伴うため、補助的に曲げ試験・シャルピー衝撃試験・硬さ試験などと組み合わせて評価されることが多いです。
■ まとめ
引張試験は、溶接部の強度と品質を総合的に評価するための基本的かつ重要な試験方法です。溶接構造物の信頼性を保証するためには、適切な試験の実施と正確な結果の解釈が求められます。