融合不良防止策
- 溶接入熱を十分に大きくして、溶け込みを確保する
- 前パスのビード計上を平坦になるように修正する
- 開先角度を大きくする
- 開先面および前パスビード表面を清浄にする
- ワイヤ狙い位置と角度を適正にする
「溶接パス間の溶接不良（パス間欠陥）」とは、多層溶接や多パス溶接を行う際に、隣接する溶接ビード（パス）同士の間に発生する欠陥のことです。これは、構造物の健全性に悪影響を及ぼす重大な欠陥となることがあります。
■ 溶接パス間の溶接不良とは？
複数の溶接ビードを重ねる際に、前のパスとの融合が不十分だったり、汚れやスラグが残留したりして、金属同士がしっかりと結合していない状態を指します。
■ 主な種類と特徴
| 欠陥名 | 説明 |
|---|---|
| パス間未融合（Lack of fusion between passes） | 新しいパスと既存パスの間に金属的な結合ができていない |
| パス間スラグ巻き込み（Slag inclusion） | 前のパスのスラグを完全に除去せず、次のパスで巻き込んでしまう |
| ガス巻き込み／ポロシティ | 前のパス表面の汚れや湿気が原因でガスが発生し空洞になる |
| ピット・クラック発生 | 不適切な熱管理や冷却によって小割れが発生することも |
■ 発生原因
| 原因カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| 清掃不足 | 前パスのスラグ・酸化皮膜・スパッタが除去されていない |
| 熱入力不足 | 電流や電圧が不適切で、母材や前パスを十分に溶かしきれない |
| トーチ操作不良 | ビードの重ね方が不適切（オーバーラップ不足・方向ずれ） |
| 冷却時間が長すぎる | 前パスが冷えすぎて、次パスとの融合が不良になる |
| パス順序・厚み不良 | 層の高さや順番が不適切で密着が悪い |
■ 欠陥の影響
- 強度低下：未融合やスラグ巻き込みにより構造的な連続性が欠ける
- 疲労破壊の起点：微小クラックから破壊が進行する
- 内部欠陥の進行：見た目ではわからず、内部で広がる可能性がある
■ 防止対策
| 対策 | 説明 |
|---|---|
| 各パスごとのスラグ・異物除去 | ワイヤブラシやグラインダーで清掃を徹底する |
| 適正な溶接条件の設定 | 特に熱入力とインターパス温度（層間温度）の管理が重要 |
| 適切なパス重ね | オーバーラップを確保し、層の形状を整える |
| 作業者の技量向上 | 多層溶接は高い熟練度が要求されるため訓練が重要 |
■ 非破壊検査による発見
- 超音波探傷検査（UT）
- X線検査（RT）
- フェーズドアレイ超音波（PAUT）
などで内部の未融合やスラグ巻き込みを検出可能です。
