
80%Ar+20%CO2混合ガス用ソリッドワイヤ(YGW15)を100%CO2のシールドガスで使用すると、100%CO2用ソリッドワイヤ(YGW11)を使用した場合に比較して、溶接金属の強度は、上昇または低下のいずれの傾向を示すか
100%CO2では酸化がより進み、溶接金属のSi、Mn量が予期した値より低くなり、強度が目的とした値よりも低下する可能性がある
詳細説明
✅ 溶接金属の強度は 低下 する傾向を示します。
🔍 理由(詳しく解説):
① 脱酸成分の不足による酸化の進行
- YGW15 は本来 アルゴン混合ガス向けに設計されたワイヤであり、アーク雰囲気が 中性に近い(酸化性が弱い) ことを前提としています。
- そのため、酸化を防ぐための**脱酸元素(Mn、Siなど)が、100%CO₂用ワイヤ(YGW11)に比べて 少なめ に設計されています。
- → 100%CO₂の強酸化性雰囲気で使用すると、酸素との反応が進みすぎて溶接金属が酸化しやすくなります。
- これにより、金属中の酸化物の増加や、靱性・延性の低下が起こるため、溶接金属の強度が低下します。
② アーク安定性・スパッタ性の悪化
- YGW15はAr混合ガス下でアーク安定性やビード外観を最適化されており、100%CO₂下ではアークの挙動が不安定になることがあります。
- 不安定なアークにより溶け込み不足、スパッタ増加、ビード不良が発生しやすくなり、溶接金属の機械的性質に悪影響。
③ YGW11はCO₂使用に最適化されている
- YGW11は100%CO₂という強い酸化雰囲気を前提に設計されており、MnやSiを多めに配合して脱酸性を高めています。
- 結果として、CO₂使用時でも安定した機械的強度とビード品質を確保できます。
🔶 結論
比較項目 | YGW15(混合ガス用) | YGW11(CO₂用) |
---|---|---|
適正ガス | Ar+CO₂混合ガス | 100% CO₂ |
脱酸性 | 中程度 | 高い |
CO₂下での強度 | 低下傾向 | 安定または向上 |
使用時の注意 | 酸化による靱性・強度低下の恐れ | 安定使用可能 |