中空ビード（ホロービード, Hollow Bead） は、溶接欠陥の一種で、
見た目は正常でも、ビード内部に中空（空洞）が形成されている状態です。外観検査では気づきにくく、内部欠陥として構造信頼性に重大な影響を与える可能性があります。
■ 中空ビードとは？
| 項目 | 内容 |
|---|
| 名称（英語） | Hollow Bead（ホロービード） |
| 別名 | 中空ビード、空洞ビード |
| 概要 | 外見上は正常なビードに見えるが、内部に気孔状または層状の空洞を持つ溶接欠陥 |
| 発生位置 | 主にビード中央部またはビード下部（根本）に現れる |
■ 模式図（断面イメージ）
[溶接断面の例]
溶接金属
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│ │
│ ● ← 中空部 │ ← 外観ではわからない
│ │
└────────────┘
■ 発生原因
| 原因分類 | 内容 |
|---|
| アーク不安定 | 不安定なアークにより、内部の金属が不均一に溶けて空洞ができる |
| 不十分な溶け込み | 表面だけが溶けて内部まで金属が満たされず、空洞が残る |
| 低い電流・熱入力 | 金属が十分に流動せず、空間が埋まらないまま凝固する |
| 不適切なトーチ角度・速度 | ビードの中にガスやスラグが閉じ込められて形成される |
| 早すぎる冷却 | 金属の流れが悪くなり、隙間を埋められないまま冷えて固まる |
■ 検出方法
| 検査法 | 説明 |
|---|
| X線透過検査（RT） | 空洞が黒い影として写るため、位置・形状が特定可能 |
| 超音波探傷検査（UT） | 内部反射が強く、異常波形として確認できる |
| 破壊試験 | 試験片を切断して断面観察を行うと空洞が確認できる |
■ 欠陥の影響
| 影響項目 | 内容 |
|---|
| 強度不足 | 内部が空洞であるため、想定よりも強度が低下する |
| 疲労耐性の低下 | 内部に欠陥があると応力集中が発生しやすく、割れの起点となる |
| 割れの進展促進 | 空洞部分を起点に亀裂が発生・進展しやすくなる |
| 非破壊検査に不合格 | 一般的な品質基準（JIS、AWSなど）では重大欠陥とされることが多い |
■ 防止対策
| 対策 | 内容 |
|---|
| 適正な電流・電圧設定 | 熱入力を確保し、内部まで金属を満たすようにする |
| トーチ操作の安定化 | 適正角度・速度・距離を守ることでビードを均一に形成 |
| 適切な前処理と清掃 | 酸化物や油分があるとガスが発生し、空洞の原因になる |
| パス間温度管理 | 適正な温度管理により、金属の流動性を確保する |
■ 関連欠陥との違い
| 欠陥 | 違い |
|---|
| ポロシティ | 小さな多数の気孔で、粒状や群状になることが多い |
| スラグ巻き込み | 中空ではなく、異物（スラグ）が内部に存在する |
| 未融合 | 金属が溶け合っていない状態で、空洞とは異なる |
