炭素鋼の炭酸ガスアーク溶接

溶接欠陥
  • 炭酸ガス(CO2)は高温のアーク熱にさらされると、遺産化炭素(CO)tp酸素(O)に分解される。生じたCOは還元性のガスとしてシールド効果を発揮する。一方、溶融池では酸素を取り除くため、合金元素による脱酸反応が利用されている。 反応により生成したMnO、SiO2等の酸化物は、溶鉄より比重が小さいため、溶融池の表面に浮上し、スラグとなる
  • 脱酸が不十分な時、溶融中の炭素と酸素の反応により生成したCOガスが溶鋼に溶解せずに気泡となり、これがボロシティ(ブローホール)の原因となる
  • 十分な脱酸を行うため、YGW11において、YGW15より多く添加している元素は、SiとMnである

詳細説明

炭素鋼の炭酸ガスアーク溶接(Carbon Steel CO₂ Arc Welding)は、CO₂(炭酸ガス)をシールドガスとして用いる半自動アーク溶接法の一種で、主に軟鋼や構造用炭素鋼の接合に広く利用されています。特に、建設・造船・自動車・鉄骨構造物などの分野で非常に多く使用される、高能率かつコストパフォーマンスに優れた溶接方法です。


🔧 炭酸ガスアーク溶接の基本原理

  • 連続送給される**ソリッドワイヤ(裸ワイヤ)**を電極とし、母材との間にアークを発生させて金属を溶融・接合します。
  • CO₂ガスはアークおよび溶融金属を空気中の酸素や窒素から保護します(これを「シールド」といいます)。
  • CO₂はアークの高温下で一部分解し、酸化反応が促進されて熱効率が高く、溶け込みが深くなるのが特徴です。

✅ 特徴

特徴内容
高能率ワイヤ自動送給により連続溶接が可能で、作業効率が高い。
深い溶け込みアーク温度が高く、母材への熱の浸透が大きいため、強固な接合が得られる。
シンプルな設備専用のガス供給装置が必要だが、構造は比較的簡単で運用しやすい。
安価なガスCO₂は他のシールドガスに比べて安価で、ランニングコストが低い。

⚠️ 注意すべき点

注意点内容
スパッタが多いCO₂の特性上、アークが不安定になりやすく、スパッタ(金属飛散)が多発する。
ビード外観が粗い酸化によって溶接ビードの見た目が粗くなる傾向がある。
ガス流量の管理が重要適切な流量(例:15〜25 L/min)でなければ、気孔や酸化欠陥が発生しやすい。
熱影響が大きい深い溶け込みの反面、母材の熱影響部(HAZ)が広くなり、変形や脆化に注意が必要。

🏗 適用例

  • 建築鉄骨、橋梁、鉄道車両などの構造物溶接
  • 自動車フレーム、シャシー部品
  • 鉄塔やタンク、パイプなどの鋼構造物

💡 溶接条件の一例(SS400の場合)

項目一般的な条件
板厚3〜12mm程度
ワイヤ径φ0.9〜1.2mm
電流150〜300A
電圧20〜30V
ガス流量15〜25L/min

※ 溶接姿勢や継手形状によって調整が必要


🔄 MIG溶接との違い

比較項目CO₂アーク溶接(MAG)MIG溶接(Arガス)
シールドガスCO₂(活性ガス)ArやAr+He(不活性ガス)
溶け込み深い比較的浅い
スパッタ多い少ない
ビードの外観やや粗い美しい
適用材料炭素鋼が主ステンレス・アルミなど非鉄も可

✅ まとめ

炭素鋼の炭酸ガスアーク溶接は、以下のような点で優れています:

  • 深い溶け込みと強度の高い継手が得られる
  • コスト効率が高く、量産向き
  • 機械的な自動化・ロボット化に対応しやすい

一方で、スパッタの制御やガス流量の管理、熱影響への配慮など、施工品質を確保するための注意点も多くあります。

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