高張力鋼
■ 高張力鋼とは?
高張力鋼(高強度鋼、HTSS)とは、通常の構造用鋼よりも引張強さや降伏強さが高い鋼材のことです。
同じ荷重に対してより薄く・軽く・強く設計できるため、建築・橋梁・自動車・船舶・重機など幅広く使われています。
■ 特徴
特徴 | 内容 |
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高い引張強さ | 一般鋼(SS400等)よりも高い引張強さ(例:590MPa以上)を持つ |
軽量化が可能 | 高強度なので板厚を薄くでき、軽量構造に有利 |
高靭性 | 衝撃や繰り返し荷重にも耐えやすい(特にTMCP鋼) |
溶接性に配慮 | 一部の高張力鋼は予熱・後熱が必要な場合あり(水素割れ対策) |
加工性 | 冷間成形用や熱間圧延品など、加工性に合わせて開発された鋼種も多数ある |
■ 主な規格と鋼種(JIS)
規格 | 鋼種 | 降伏点(参考) | 用途例 |
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JIS G 3106 | SM490・SM520・SM570 | 325~570MPa | 建築・橋梁 |
JIS G 3136 | SN490B など | 325~490MPa | 建築構造物 |
JIS G 3113 | SPFH590, SPFH780 など | 590~780MPa | 自動車部品 |
JIS G 3128 | SBHS400~700 | 400~700MPa | 橋梁用鋼材(高性能鋼) |
■ 製造方法と分類
分類 | 製法 | 特徴 |
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合金系高張力鋼 | マンガン・ニッケル・クロムなどを添加 | 強度・靭性を向上 |
焼入れ焼戻し鋼(QT鋼) | 焼入れ+焼戻し処理で強度を確保 | 重機・クレーンなど |
TMCP鋼(熱機械制御圧延鋼) | 熱処理と圧延を制御して強化 | 靭性が高く溶接性良好、橋梁・船舶向け |
■ 主な用途
分野 | 内容 |
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建築・橋梁 | 大スパン構造、高層ビル、耐震補強 |
自動車 | 軽量化と安全性向上(モノコックボディ、衝撃吸収ゾーン) |
重機・プラント | クレーン、ブルドーザー、圧力容器など |
造船・航空 | 軽量かつ高強度な構造材として活躍 |
■ 高張力鋼の利点と注意点
利点 | 注意点 |
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・軽量化でコスト・燃費向上(自動車) ・高強度で薄肉化・省スペース設計が可能 | ・溶接施工に注意が必要(予熱やパス間温度管理) ・成形時の割れやバネ戻りに注意 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | 高張力鋼(高強度鋼、High Tensile Steel) |
強さ | 一般構造用鋼より高い引張強さ・降伏点 |
用途 | 建築、自動車、橋梁、機械、造船など |
特徴 | 軽量化、省スペース、強靭性、成形・溶接には適切な管理が必要 |