
高所作業
高さが2m以上の高所でアーク溶接を行う場合の注意事項
- 安全に昇降するための設備を設ける
- 服装を整え、必ず安全帯(安全ベルト、命綱)を使用する
- 墜落防止ネットを張る
- 作業を安全に行うために必要な照度を保持する
- 周囲の状況をよく把握して、危険な動作や無理な姿勢で作業をしない
- 滑りやすい靴は避ける。雨天や風雪の際はとくに注意する
- 強風、大雨、大雪などの悪天候のため、危険が予測される場合は、作業をしない
- 不安定な踏み台などは使用しない
- 工具や材料は、取り落とすことのないよう結びつけるか、安全な場所に置く
- はしご、手すり、足場など安全を確かめてから作業にかかる
- スパッタ、スラグの拡散・落下を防災シートなどで防ぐ
- 交流アーク溶接機を使用する場合は、自動電撃防止装置を使用する
- 1つの足場に制限以上の大人数が乗って作業しない(足場の制限荷重を超えてはいけない)
- 足場の上に重量物を置かない
- 足場の上を走ったり、飛び降りたりしない
- 長時間かがみこんで作業した後、急に立ち上がらない
- 溶接棒の残頭や切断辺の回収容器を準備し、作業中はそのつど回収容器に回収し、作業後はスラグなどを片付ける
- 不備な点があれば、関係者・上司に報告・連絡する
- (×)見張り員を置く
■ 注意事項の詳細説明
① 墜落防止対策(最重要)
- 安全帯(フルハーネス型)を着用し、ライフラインに確実に接続する。
- 2019年の法改正により、2m以上の高所では原則フルハーネスの使用が義務化。
- 作業床(足場)や作業台を設置し、手すり・中さん・蹴り止め板を設ける。
- 不安定な場所での作業は禁止(はしごや単管パイプの上など)。
- 開口部や端部では特に注意し、転倒・転落防止措置を徹底。
② 感電防止
- アース(接地)を確実に取る。電撃事故の多くはアース不良が原因。
- 電源装置やコード、ホルダーの絶縁状態を事前に点検する。
- 濡れた環境や雨天での作業は禁止。感電の危険が高まる。
- 金属に接触する際は注意し、電流の流れを意識して作業する。
③ 火災・やけどの防止
- 火花が落下する範囲に可燃物がないか確認。必要に応じて防炎シートで覆う。
- 下方作業者がいる場合は必ず遮熱・遮光措置を施し、落下火花に注意喚起。
- 消火器を手の届く場所に常備し、作業前に動作確認を行う。
④ 安全確認と監視体制
- 作業開始前にKY(危険予知)活動を実施し、リスクと対策を共有。
- 作業責任者を配置し、作業中の監視や指示を行う。
- 単独作業は原則禁止。複数人での作業または巡回監視が望ましい。
⑤ 作業者の教育・資格
- アーク溶接作業は**「特別教育」修了者**でなければ行えません。
- 高所作業に関しても、**「高所作業に関する教育」や「フルハーネス型安全帯使用特別教育」**が必要。
- 定期的な安全教育を実施し、作業者が危険を理解・回避できるスキルを保持していることが重要です。
⑥ 保護具の着用と点検
- 遮光面(面体)や皮手袋、革エプロン、安全靴などの保護具を完全着用。
- これらの装備が損傷していないかを事前点検。
- フルハーネスの使用前点検(ベルトの亀裂や金具の変形がないか)も必須。
⑦ 天候や環境への配慮
- 強風時や雨天時の高所作業は禁止または中止の判断を行う。
- 夏場の熱中症、冬場の感電リスクにも留意する。
- 落雷の恐れがある場合は、速やかに作業を中止し退避する。
⑧ 溶接機器・ケーブルの管理
- 溶接ケーブルは高所から吊り下げず、足元の邪魔にならないよう固定する。
- ケーブルの断線・被覆破損がないか点検し、地絡防止措置をとる。
- 使用する溶接機も、絶縁・接地・容量の確認を徹底する。
■ まとめ
2m以上の高所でのアーク溶接作業は、墜落・感電・火災という三大リスクを伴うため、法令遵守と実践的な安全対策が必要です。作業前のリスクアセスメント、安全教育、保護具の適切な使用に加え、現場環境やチーム内での連携が、安全で効率的な作業につながります。