🔧 高温割れとは?
高温割れは、溶接金属がまだ高温(約1200℃〜固化完了前)で塑性が乏しい状態のときに、
引張応力や収縮応力によって割れが発生する溶接欠陥です。
🧪 発生するタイミング・部位
- 溶接金属の凝固直後(液相線付近)
- 溶接ビードの中央部・ビードの端部(クレータ割れ)
- 多層盛りのビード間
- 開先の底部や母材との融合部近傍
🛠 高温割れの種類
種類 | 内容 |
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凝固割れ(solidification cracking) | 溶接金属が凝固する最中に発生。最も一般的な高温割れ。 |
粒界割れ(liquation cracking) | 母材の粒界が局所的に溶けて再凝固する時に割れる。 |
クレータ割れ | アークの終了時、クレータ部(端部)で収縮応力により発生。 |
🔍 高温割れの原因
主な要因 | 詳細説明 |
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化学成分の偏り | 硫黄、リンなどの低融点元素が局部に偏ると、凝固末期に液体脆化が起こる。 |
収縮応力 | 急速冷却で高い引張応力が発生すると、凝固時の金属が破断しやすい。 |
不適切な溶接条件 | 高電流、早すぎる溶接速度、クレータ処理の不備など。 |
開先形状・溶接順序 | 開先底部に応力集中や融合不良があると割れやすい。 |
🧯 防止対策
対策項目 | 内容 |
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🔹 適切な溶接材料の選定 | 低硫黄・低リンの溶接材料を使う(例:低水素系)。 |
🔹 溶接順序の工夫 | 応力集中を避けるシーケンスで溶接する。 |
🔹 クレータ処理の実施 | アーク停止時にクレータを埋めて割れを防ぐ。 |
🔹 パス間温度の管理 | 急激な温度差を避け、適度な中間温度を保持。 |
🔹 ビード形状の適正化 | 均一な幅・高さで応力集中を防ぐ形状にする。 |
🖼 高温割れの断面イメージ図(説明)
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| ▲ ← 凝固割れ
| ▲ ▲
| ▲ ▲ ← 溶接ビード中央部に亀裂
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母材 母材
- 中央部に縦方向の割れ(凝固割れ)
- クレータ部に小さな裂け目(クレータ割れ)
※ 実際の観察では、ルーペ・マクロ断面観察・X線検査などで確認されます。
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | 高温割れ(Hot Cracking) |
発生条件 | 金属がまだ高温で固まっていない時、収縮応力等により発生 |
主な部位 | 溶接ビード中央・クレータ・開先底部など |
対策 | 成分制御、クレータ処理、溶接順序の最適化、適切な材料選定 |