高温用鋼 高温に適した鋼

高温用鋼

  • 1Cr-0.5Mo鋼
  • 1.25Cr-0.5Mo鋼
  • 2.25Cr-1Mo鋼
  • 5Cr-0.5Mo鋼
  • 9Cr-1Mo鋼
  • 9Cr-1Mo-0.2V鋼
  • Mn-Mo-Ni鋼

必要とされる性質

  • 高温用鋼に要求される特性は高温強度だけでなく、対酸化性、クリープ特性、対高圧水素特性など使用環境に応じた特性が要求される

高温用に適した鋼の概要

高温環境下では、材料に対して強度・酸化抵抗性・クリープ耐性・組織安定性などの厳しい特性が求められます。一般的な炭素鋼は、高温になると強度が著しく低下し、酸化や変形も進みやすくなるため、**高温用鋼(耐熱鋼)**が使用されます。これらは、ボイラー、火力発電、石油化学プラント、内燃機関、航空機部品などの分野で重要な役割を担っています。


高温用鋼の種類と特徴

高温用鋼にはいくつかの種類があり、用途に応じて適切な鋼種が選ばれます。主な種類は以下の通りです。

1. 低合金耐熱鋼

代表例:12CrMo、2.25Cr-1Mo鋼(SA213-T22など)
これらは比較的低コストでありながら、450〜600℃程度の高温環境でも使用可能です。クロム(Cr)とモリブデン(Mo)の添加により、高温強度・酸化抵抗性・クリープ特性が向上します。火力発電の再熱器・過熱器チューブなどに使用されます。

2. フェライト系耐熱鋼

代表例:SUS430、SUS446など
クロムを多く含み、酸化や腐食に強く、熱膨張係数が小さいのが特徴です。800℃程度までの使用が可能で、排ガス部品や熱交換器などに使用されます。オーステナイト系よりも高温強度は劣りますが、熱疲労や熱歪みには強いです。

3. オーステナイト系耐熱鋼

代表例:SUS304H、SUS310S、SUS347H、HR3Cなど
オーステナイト系は高温強度・酸化耐性・組織安定性に非常に優れ、650~1000℃以上の環境でも使用されます。例えば、SUS310Sは25Cr-20Niを含み、非常に高い酸化抵抗を持ち、ボイラーや炉内部材に適しています。

オーステナイト系はニッケル(Ni)を多く含むため価格は高めですが、高温環境下での長期的なクリープ破断寿命に優れているため、特に重要な箇所で採用されます。

4. 析出強化型耐熱鋼(耐クリープ鋼)

代表例:TP347HFG、Alloy 617、Alloy 625、Super304Hなど
これらは、微細な炭化物や間隙相の析出による強化を図っており、超々臨界圧(USC)ボイラーなどの高温・高圧環境下(600~700℃)での長期使用に適しています。Ni基の合金は特に耐熱性が高く、航空エンジンやタービンブレードでも使用されます。


高温用鋼の選定基準

高温用鋼を選定する際は、以下の特性を総合的に評価します:

  • 高温引張強度・クリープ強度:設計温度で必要な機械的強度を保てるか。
  • 酸化・スケール抵抗性:高温腐食やスケール生成を抑制できるか。
  • 溶接性と構造健全性:施工時の加工や溶接に耐えうるか。
  • 価格と供給性:コストと入手性のバランス。
  • 組織の安定性:長期運転中の組織変化や相変態に耐えられるか。

まとめ

高温用に適した鋼は、使用される温度域や環境条件に応じて適切に選定されるべきです。低合金耐熱鋼やフェライト系は中高温用途に適し、オーステナイト系やNi基合金は超高温でも長期的に使用可能です。高温環境下では単に強度だけでなく、酸化抵抗性やクリープ特性、組織の安定性も重要となります。各種高温鋼の特徴を理解し、適材適所で選ぶことが、高信頼性の設計に繋がります。

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