CO2ガス用ワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒心線と比較して保有量の多い成分及び多量に使用される理由。

溶接材料
  • Si(シリコン)、Mn(マンガン)
  • 炭酸ガスは活性であるので、ワイヤ中にシリコンとマンガンを比較的多量に保有させて、これらの元素により脱酸反応を促進させ、脱酸生成物をビード表面に浮上分離させ健全な溶接金属を得る。また、この脱酸により酸素が低減し、溶融池の炭素と酸素の反応によって生じる CO2ガス発生量が抑制されブローホールが減少する

詳細説明

🔶 より多く含まれる成分:

マンガン(Mn)

 


🔷 比較表(代表値)

成分CO₂ガス用ワイヤ(例:YGW12)被覆アーク溶接棒の心線(例:E4313)
Mn(マンガン)約 1.4〜1.7 %約 0.4〜0.6 %
Si(ケイ素)約 0.8〜1.0 %約 0.2〜0.3 %
C、P、Sなど両者とも低含有(C:0.08 %以下 など)

※ 上記は代表的な値であり、製品によって若干異なります。


🔶 マンガン(Mn)が多く含まれる理由

CO₂ガスシールドアーク溶接では、**溶接時のアークが酸化的雰囲気(酸素が多い)**になるため、溶融金属が酸化されやすい傾向があります。そのため:

✅ Mnは以下の理由で多く添加されます:

  1. 脱酸作用(Deoxidizer)
    • Mnは酸素と反応して酸化マンガン(MnO)を生成することで、溶融金属中の酸素を除去。
    • これにより、ポロシティ(ブローホール)や割れの防止につながる。
  2. 硫黄(S)との結合性
    • Mnは硫黄と結合して MnS を形成し、硫化物割れを防止
    • 低Mnだと FeS(低融点化合物)が形成され、ホットクラック(高温割れ)の原因になる。
  3. 機械的性質の改善
    • Mnは引張強さや靭性の向上に寄与する。
    • 特に低温靭性や衝撃特性を改善し、建築・橋梁などの構造用溶接に適する機械特性が得られる。

🔷 Si(ケイ素)も多め

  • 脱酸性を高める目的で Si も多く含まれています。
  • SiO₂としてスラグ生成にも寄与し、金属の清浄化に役立ちます。

🔶 まとめ

項目内容
より多く含まれる成分マンガン(Mn)、次いで ケイ素(Si)
主な目的酸化防止(脱酸作用)、硫黄との結合による割れ防止、機械的性質の向上
CO₂溶接の特徴酸化的なアーク雰囲気 → 脱酸成分を多めに必要とする
結果MnとSiが被覆アーク溶接棒の心線よりも多量に添加されている
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