熱中症

夏期の溶接作業で起きる危険性が高い熱中症にについて示す
  • 【熱中症が疑われる作業者の状態】
    体温が高くなる
    皮膚が赤く、触ると厚く、乾いた状態になる
    ズキンズキンとする頭痛
    めまい、吐き気
    応答がおかしい、呼びかけに反応しない
    全身痙攣
    など
  • 【熱中症が疑われた作業者の緊急処置】
    涼しい場所への移送
    脱衣とレ客
    水分と塩分の補給
    医療機関への搬送
  • 【溶接作業者の熱中症防止対策】
    局所冷房(スポットクーラー)の採用
    扇風機の使用
    電動ファン付き呼吸用保護具の着用
    クールスーツの使用
    積極的な外気の取り込み
    作業者の健康確認の巡視
    屋外溶接では直射日光を避ける
    など

詳細

溶接作業において、熱中症は非常に重要な健康リスクの一つです。特に夏場や高温環境下での作業、屋内での重作業が多い溶接作業では、熱中症の危険性が飛躍的に高まります。ここでは、溶接と熱中症の関係、症状、予防対策などについて詳しく解説します。


熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境下で体温調節機能が破綻することにより発生する障害の総称です。体内に熱がこもり、体温が異常に上昇することで、筋肉のけいれん、めまい、吐き気、意識障害など、さまざまな症状を引き起こします。重症化すると、命に関わる危険な状態に至ることもあります。


溶接作業と熱中症の関係

溶接作業は、熱中症のリスクを高める要因がいくつも重なる作業環境です。以下のような特徴がその理由です。

1. 高温環境での作業

アーク溶接やガス溶接では、溶接部分が2000~6000℃以上の高温になります。その熱が周囲に放出されることで、作業者が受ける輻射熱も非常に高くなります。狭い作業空間や風通しの悪い場所では熱がこもりやすく、体温調節が困難になります。

2. 保護具の着用

溶接作業では、火花や紫外線から身を守るために、防火服、革手袋、溶接面、ヘルメットなど、全身を覆う重装備が必要です。これにより、体からの放熱や発汗による冷却が阻害され、体温が上がりやすくなります。

3. 重労働による体力消耗

溶接は集中力と筋力を必要とする作業であり、体力の消耗も激しいため、汗による水分・塩分の喪失が加速されます。これが脱水や電解質のバランス崩壊を引き起こし、熱中症の原因となります。


熱中症の主な症状

熱中症はその重症度によって段階が分かれており、以下のような症状が現れます。

軽度(Ⅰ度):

  • めまい、立ちくらみ
  • 筋肉のけいれん(こむら返り)
  • 大量の発汗

中等度(Ⅱ度):

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 倦怠感、集中力低下
  • 脈の速まり

重度(Ⅲ度):

  • 意識障害(呼びかけに応じない)
  • けいれん
  • 高体温(40℃以上)
  • 失神、昏睡

重症化する前に早期発見・早期対応をすることが命を守るうえで非常に重要です。


熱中症予防の対策

1. 作業環境の改善

  • 作業場所の温度や湿度を測定し、WBGT(暑さ指数*が高い場合は作業を一時中断するなどの判断を行う。
  • 換気扇やスポットクーラー、送風機などを設置して熱気の滞留を防ぐ
  • 屋外では、テントや日除けで直射日光を遮断

2. 服装と装備の工夫

  • 通気性・吸湿性のあるインナーを着用し、熱のこもりを軽減。
  • 空調服(送風ファン付きの作業服)を利用することで、保護を維持しながら体温上昇を防ぐ。
  • 必要に応じて、冷却ベストや冷却タオルを使用する。

3. 水分・塩分の補給

  • こまめな水分補給を習慣化し、1時間に1回は休憩をとってスポーツドリンクなどで電解質も補給
  • のどの渇きを感じる前に飲むことが重要。

4. 作業スケジュールの工夫

  • 早朝や夕方など比較的涼しい時間帯に作業を集中させ、気温が高い時間帯は休憩や軽作業に切り替える。
  • 1人作業を避け、仲間同士で互いの体調を確認し合う(熱中症の兆候に気づきやすくなる)。

5. 教育と訓練

  • 作業員全員が熱中症の初期症状や対応方法を理解しておくことが重要。
  • 毎年、熱中症に関する教育や安全講習を実施する。

万が一の対応

熱中症の疑いがある作業員を見つけたら、すぐに以下の対応を取ります:

  1. すぐに涼しい場所へ移動
  2. 衣服を緩めて冷却(首元、脇、股を重点的に)
  3. 水分・塩分を補給(意識がある場合)
  4. 意識がない・反応が鈍い場合は、すぐに救急車を呼ぶ

まとめ

溶接作業は高温かつ重装備の環境で行われるため、熱中症のリスクが非常に高くなります。命に関わる重篤な症状を防ぐためには、作業環境の整備、適切な水分・塩分補給、服装の工夫、作業スケジュールの見直しなど、現場全体で対策を講じることが不可欠です。加えて、作業者一人ひとりの熱中症に対する正しい理解と危機意識が、安全な作業環境を築くうえで何よりも重要です。

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