サブマージアーク溶接 submerged arc welding(SAW)

溶接法
厚鋼板の下向き突合わせ継手の大電流自動溶接に用いられる。
フラックスを利用するアーク溶接の代表例の1つ

溶融保護の概要:フラックスによって発生するガス、または散布したフラックスで溶融池を覆い、大気から保護する。また、生成した溶融スラグが溶融池の表面を覆い、酸化や窒化を防止する。

溶接部に沿って粒状のフラックスを供給し、その中にワイヤを供給して溶接を行う。自動溶接法としては最も代表的なものである。

フラックスの種類

溶融フラックス:原料鉱石を混合、融解し、これを急冷凝固させた後、粉砕、整粒したもので、ガラス状のものと軽石状のものがある

  • ボンドフラックスは石灰石(CaCO3)、ほたる石(CaF2)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al2O3)などを主成分とする原料粉や金属粉、合金紛を混合、水ガラスを添加して造粒後、600℃程度で焼成したフラックス 
比較項目溶融フラックスボンドフラックス
フラックスの吸湿性吸湿しにくい吸湿しやすい
大入熱溶接への対応不適当
スラグが焼き付きやすい
適している
スラグ剥離もよい
合金元素の添加性ほとんど不可能容易
フラックスの均一性均一やや均一
溶接金属のじん性ワイヤの成分の影響が大きく、フラックスの影響は小比較的容易に高いじん性が得られる

  

詳細説明

サブマージアーク溶接(Submerged Arc Welding、略称:SAW)は、高能率で高品質な自動または半自動溶接法の一つで、主に厚板の長尺直線溶接や円周溶接に使用されます。粉状のフラックス(被覆材)の下でアークを発生させるため、「サブマージド(埋没)」という名がついています。


🔧 サブマージアーク溶接の原理

  • 連続送給されるワイヤ電極と、母材との間にアークを発生させて溶接します。
  • 溶接部は粒状のフラックスで完全に覆われており、アークは外部から見えません。
  • アークの熱でワイヤと母材が溶融し、溶融フラックスがスラグ(溶融被覆)となって表面を覆います
  • フラックスはアークと溶融金属を酸素や窒素から保護し、脱酸・浄化・合金化の役割も担います。

🛠 特徴

項目内容
アーク可視性粉状フラックスの下で発生するためアークが見えない
溶接方法主に自動または機械化溶接(トーチを機械で移動)
ワイヤ供給連続的(巻き取り線)
熱入力非常に高い(厚板の一発溶接が可能)
溶接速度高速(数倍の生産性)
保護ガス不要(フラックスで保護)

⚙ 使用装置構成

  1. 電源装置(直流または交流)
  2. ワイヤ供給装置
  3. トーチ
  4. フラックス供給装置
  5. フラックス回収装置(再利用のため)
  6. トラベリング装置(自動走行ユニット)

📦 フラックスの役割

機能内容
保護作用アーク・溶融金属を外気から遮断
脱酸・浄化不純物の除去やスラグとしての凝固
合金元素の供給溶着金属の特性向上
スラグ形成表面張力を調整しビード形成を安定化

📈 メリット

項目内容
高能率高速で大量の溶接が可能(生産性が高い)
溶け込みが深い厚板溶接に最適、ビード幅も広い
高品質酸素混入が少なく、欠陥が出にくい
スパッタなしフラックスに覆われているため飛散がない
騒音や光が少ないアークが見えないので作業環境が良好

⚠ デメリット

項目内容
姿勢制限あり下向き溶接が基本(上向き・立向きは困難)
設備が大型・高価自動化に伴いコストがかかる
薄板には不向き熱入力が高すぎて板が変形しやすい
視認性が低いアークが見えないため操作感がない
作業場所制限屋外や狭い場所での作業は不適

🏗 主な適用例

用途具体例
造船・橋梁厚板の長尺溶接
タンク製造円周溶接や直線溶接
圧力容器裏波のない高品質溶接
パイプライン大径配管の長距離溶接

🔍 溶接例(プロセスの流れ)

  1. 母材にフラックスを供給
  2. ワイヤトーチが自動で前進しながら溶接
  3. アークがフラックスの下で発生
  4. 溶融金属がスラグで保護されつつ凝固
  5. 冷却後スラグ除去、フラックスは回収・再利用

✅ まとめ

項目概要
別名SAW(Submerged Arc Welding)
溶接姿勢基本的に下向きのみ
溶接厚さ中厚板~極厚板に適する(10mm~100mm超)
適用分野大型構造物、長距離直線溶接、大量溶接向き
自動化適性非常に高い(生産ライン向き)
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