サブマージアーク溶接の歴史

溶接法

サブマージアーク溶接(Submerged Arc Welding, SAW)の歴史は、20世紀前半にさかのぼります。この溶接法は高能率・高品質な溶接が可能であるため、発明以来急速に発展し、現在も造船・橋梁・圧力容器などの重工業分野で広く使用されています。


🕰 サブマージアーク溶接の歴史的な流れ

🔹 1930年代:誕生

  • 1935年:アメリカ合衆国のバトラー研究所(The National Tube Company / Union Carbide and Carbon Corporation)にて、Jones, Kennedy, Rothermundの3名によって開発されました。
  • 特許が1935年に申請され、1937年に取得。
  • 当初の名称は「Hidden Arc Welding」。その名の通り、アークがフラックスの下に隠れているという特徴から名付けられた。

🔍 初期は細径パイプの縦方向自動溶接を目的としていたが、その高能率性から厚板の長手方向溶接などにも展開されていきました。


🔹 1940年代:第二次世界大戦による拡大

  • 第二次世界大戦中(1941〜1945年)に、アメリカの造船業界で大量に導入されました。
  • リバティ船の建造に用いられ、高速かつ強度の高い溶接が可能であったことから、従来のリベット接合に代わる重要技術となりました。
  • この時期に、サブマージアーク溶接は「大量生産に適した溶接法」として確立。

🔹 1950〜70年代:自動化・高能率化

  • 大型構造物やパイプラインの建設にともない、全自動溶接機やトラベリングシステム(溶接トーチが移動する装置)が発展。
  • 多層・多パス溶接、二重ワイヤ方式(タンデム溶接)、多電極方式などの派生技術が登場。
  • フラックスの種類も進化し、合金成分の制御やスラグ除去性の改善が進む。

🔹 1980年代以降:溶接品質と制御性の向上

  • マイクロプロセッサ制御、電流・電圧の波形制御など、より精密な溶接制御が可能に
  • フラックス再利用装置やエネルギー効率の向上も進み、コストと環境面での改良が行われる。
  • 特に原子力、重電機、化学プラント、石油・ガス産業などで欠かせない溶接法に。

📌 歴史のまとめ(年表)

年代主な出来事
1935年アメリカでJonesらが発明・特許取得
1937年商用利用開始(Union Carbide)
1940年代第二次世界大戦で大量導入(リバティ船)
1950〜60年代重工業への本格普及、自動溶接機の登場
1970〜80年代高能率・多電極・精密制御化
1990年代以降エネルギー効率や環境対応型システムへの進化

🔍 なぜ歴史的に重要だったのか?

  • 戦時中の大量建造ニーズに応えたことで、溶接技術の重要性が一気に認識された。
  • SAWはアークが見えず、安全性や作業環境の面でも優れていた
  • リベット接合から溶接構造への転換の象徴的技術となった。
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