溶接の生産性の考え方

概要

  • input(溶接機台数、溶接材料)⇒output(溶接長)
  • 工程能力=質的能力
  • 溶接コスト:労務費+溶接材料費+溶接設備使用費  
    ⇒溶接施工方法が大きく影響を及ぼす  
    ⇒溶着速度(単位時間当たりの溶着金属量)の増大はコスト低減につながる  

🔧 溶接の生産性とは?

溶接作業における生産性とは、単位時間あたりに得られる良質な溶接金属の量、または目標とする溶接結果を達成するまでの効率を指します。


📊 主な評価指標(生産性を定量化する視点)

指標名内容
溶接速度(mm/min)実際にアークが動く速度(トーチの移動速度)
溶着速度(kg/h)単位時間あたりに堆積される金属の質量
溶着効率(%)使用したワイヤ量に対して実際に溶接に寄与した割合
アーク稼働率(%)作業全体のうち、実際にアークを出して溶接していた時間の割合
スキル依存度作業者の技能により品質や速度が変動する程度
不良率・修正率手直しが必要となる割合(低いほど生産性は高い)

🧠 生産性向上のための考え方

1. 溶接法の選定

  • TIG → 高品質だが低速
  • MIG/MAG → 自動化しやすく高速
  • SAW(サブマージアーク溶接)→ 長尺・厚板向きで高能率
  • 使用目的に応じた適切なプロセス選定が生産性の基礎。

2. 自動化・機械化の導入

  • 人手溶接ではアーク稼働率が30〜40%程度。
  • ロボットやトラッキング装置を導入すれば80%以上の稼働率も可能。

3. 段取りと準備時間の短縮

  • 溶接前のセッティング、治具調整、仮付けの最適化。
  • 「溶接作業以外のムダな時間」を削減することが生産性に直結。

4. 材料・消耗品の管理

  • 適切なワイヤ径、ガス流量、電流電圧設定を守る。
  • フラックスや保護ガスの品質・管理も重要。

5. 作業の標準化・熟練度向上

  • 熟練者に頼るのではなく、作業の標準手順書(WPS)を活用し、技能のばらつきを減らす。

📈 生産性のモデル式(参考)

溶接生産性 = 溶着量 × アーク稼働率 × 溶着効率

例えば:

  • 溶着量:5.0 kg/h
  • アーク稼働率:40%
  • 溶着効率:90%

→ 実効的生産量 ≒ 5.0 × 0.4 × 0.9 = 1.8 kg/h


✅ 生産性向上の具体例

施策効果
ワイヤ径を0.9mmから1.2mmに変更溶着速度向上(ただし熱入力も増加)
自動溶接ライン導入アーク稼働率向上、品質安定
フィラーレスTIGやレーザー溶接採用修正工程減少、外観向上
作業姿勢の最適化疲労軽減 → 作業時間短縮

🔚 まとめ

溶接の生産性を高めるには、次のような総合的なバランス感覚が重要です。

  • スピード:ただ速くするだけではダメ
  • 品質:手直しを減らす方がトータルで効率的
  • 安定性:工程の標準化と自動化がカギ
  • 人と設備:技能・設備の両輪で高める
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