定電流特性

溶接電源の外部特性の一つである定電流特性(ていでんりゅうとくせい/constant current characteristic)は、主に被覆アーク溶接(SMAW)やTIG溶接(GTAW)といった手動溶接に用いられる電源の特性です。以下に詳しく解説します。
🔍 定電流特性とは?
定電流特性とは、アーク電圧が変化しても溶接電流がほぼ一定に保たれる特性です。
外部特性曲線で見ると、電圧が変動しても電流がほとんど変わらない「降下形のカーブ」を描きます。
これは、溶接中に作業者が電極と母材との距離(=アーク長)をわずかに変えてしまった場合でも、溶接電流が大きく変動せずに安定したアークが維持されるという意味です。
✅ 定電流特性の利点
- アークの安定性が高い
アーク長が短くなっても電流が急上昇しないため、溶接金属の飛散や過溶融を防ぎ、アークの途切れを防ぎます。 - 一定の溶け込みが得られる
電流がほぼ一定に保たれるため、母材への溶け込み深さが安定し、品質の均一性が高まります。 - 手動溶接に適する
作業者による電極の保持位置の微小なぶれがあっても、大きな影響を受けにくく、扱いやすい特性です。 - トーチやワイヤの損傷が少ない
急激な電流増加が起きにくいため、電極やトーチの消耗を抑えられます。
⚠️ 定電流特性の注意点・欠点
- ワイヤ送給式の自動溶接には不向き
電流が一定のため、ワイヤ溶け落ち量と送給速度の調整が難しく、自動化には向いていません。 - アーク長によるビード形状の変化に注意
アーク長の変化が電圧に現れるため、ビードの幅やアンダーカットに影響を及ぼす場合があります。
🎯 適用される主な溶接法
溶接法 | 用途例 | 定電流特性が活きる理由 |
---|---|---|
被覆アーク溶接(SMAW) | 建設、配管、補修 | 作業者の動きに追従しやすい |
TIG溶接(GTAW) | 薄板、高品質部品 | アーク制御と溶け込みの安定性 |
まとめ
定電流特性を持つ溶接電源は、電流を一定に保ちながらアークを安定させるという特長から、手動溶接や高品質な溶接作業において非常に有効です。
特にアーク長の変動が避けられない現場では、定電流特性の溶接電源を選ぶことで、作業の安定性と品質の確保が可能になります。