「アブレシブウォータージェット切断(Abrasive Waterjet Cutting)」は、高圧水に研磨材(アブレシブ)を混ぜて材料を高速で切断する加工方法です。接触や熱による影響がほとんどなく、金属からガラス、セラミック、複合材までほぼすべての材料を高精度に切断できます。
🧩 アブレシブウォータージェット切断とは?
水+研磨材(例:ガーネット)を細いノズルから超高速(音速の数倍)で噴射し、その物理的衝撃力で材料を切断する技術です。
非熱加工なので熱変形・バリ・酸化が発生しないという大きな特徴があります。
⚙️ 原理・構造
🧪 構成要素
| 要素 | 概要 |
|---|
| 高圧ポンプ | 水を約4,000~6,000 bar(400〜600 MPa)まで加圧する |
| 研磨材供給装置 | ガーネット(ざくろ石)などを制御供給 |
| ミキシングチャンバー | 高圧水とアブレシブを混合する |
| ノズル(オリフィス) | 0.1〜0.4mm程度の細孔から噴射 |
| CNC制御機械 | X-Yテーブルまたは5軸制御で複雑形状にも対応 |
💧 アブレシブウォータージェット vs ピュアウォータージェット
| 項目 | アブレシブWJ | ピュアWJ(水のみ) |
|---|
| 切断力 | 強力(硬い素材向け) | 弱い(柔らかい素材向け) |
| 対象材料 | 金属、石材、セラミック等 | ゴム、食品、紙、布など |
| ノズル寿命 | 短め(研磨材の摩耗あり) | 長め |
| 用途 | 工業部品、建材 | 食品加工、医療、包装等 |
✂️ 加工対象と用途
| 材料 | 切断可否 | 備考 |
|---|
| ステンレス鋼 | ◎ | 高精度加工可能 |
| アルミ・銅 | ◎ | 熱影響なく切断可 |
| チタン・インコネル | ◎ | 航空宇宙用途に適 |
| セラミック・石材 | ◎ | クラックレス加工可 |
| 複合材(CFRP等) | ◎ | デラミネーションなし |
| ゴム・樹脂・木材 | ○ | 研磨剤不要(ピュアWJ推奨) |
📈 特徴とメリット
✅ メリット
| 特徴 | 説明 |
|---|
| 非熱加工 | 焼け、変色、酸化、熱歪みが一切ない |
| バリなし・滑らかな切断面 | 後処理不要な仕上がりが可能 |
| 硬くても切れる | 超硬合金、ガラスなどもOK |
| 多様な形状加工 | 穴あけ、曲線、斜め、3D形状も |
| 環境負荷が小さい | 切削油や有害ガス不要 |
❌ デメリット
| 課題 | 内容 |
|---|
| 設備コスト | 高圧ポンプやノズルの導入コストが高い |
| ノズル・部品の摩耗 | 研磨材のため消耗が激しい(定期交換必要) |
| 研磨材の処理 | ガーネット廃棄や再利用の管理が必要 |
| 切断速度 | レーザーよりやや遅いこともある(特に薄物) |
| 騒音・水跳ね | 加工時に大きな音と水飛散がある(防音防水対策必要) |
🔍 主な加工条件の一例
| 項目 | 代表値 |
|---|
| 水圧 | 3,800~6,000 bar(MPa) |
| ノズル径 | 約0.1~0.4 mm |
| 切断速度 | 数mm〜数百mm/min(材料と厚みによる) |
| 研磨材 | ガーネット(粒径 80~120メッシュ) |
| 板厚対応 | 数mm~300mm超(材料による) |
🧭 主な用途と業界例
| 業界 | 使用例 |
|---|
| 航空宇宙 | チタン・複合材部品の非熱加工 |
| 自動車 | プロト部品、内装部品の切断 |
| 金属加工 | SUS・アルミ等の精密切断 |
| 建築・石材 | タイル・御影石・スレートの切断 |
| 電子部品 | セラミック基板の微細加工 |
| 食品・医療 | ピュアウォータージェットで滅菌切断 |
⚠️ 安全対策
- 高圧水による破壊力が非常に大きいため、接触厳禁
- 専用の防音・防水シールドルームでの使用
- 加工中は自動運転・遠隔監視が基本
- 廃液処理・研磨材処理の管理が必要
📌 まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|
| 名称 | アブレシブウォータージェット切断 |
| 切断対象 | 金属・セラミック・複合材など広範囲 |
| 特徴 | 非接触・非熱・高精度・環境対応型 |
| 使用材料 | 高圧水+ガーネット等のアブレシブ |
| 主な用途 | 精密切断、異種材料切断、熱変形不可部品 |