フラックス入りワイヤを使用する事により、シールドガスを流さずに溶接できる溶接法。
フラックスを利用するアーク溶接の代表例の1つ
溶融保護の概要:フラックスによって発生するガス、または散布したフラックスで溶融池を覆い、大気から保護する。また、生成した溶融スラグが溶融池の表面を覆い、酸化や窒化を防止する。
特徴
- ワイヤ線の中心部分にフラックスが入っており、溶接時にアーク熱に反応してシールドガスを発生させ、溶融池を大気中の窒素や酸素から遮断・保護するので、シールドガスが不要
- 風の影響を受けにくい
- トーチは軽量で操作性が良い
- ヒューム発生量が多い
- 溶け込みが浅い
- じん性、延性などの機械的性質が多少劣る
- 大気中窒素・酸素の悪影響を避けるためアークを極力短くして溶接する必要がある
詳細説明
「セルフシールドアーク溶接(Self-Shielded Arc Welding)」は、被覆アーク溶接の一種であり、ガスを外部から供給せず、溶接ワイヤ内に含まれるフラックス成分によって自動的にシールド(保護)ガスを発生させる方式です。
主に「セルフシールドフラックス入りワイヤ溶接(Self-Shielded Flux-Cored Arc Welding:FCAW-S)」と呼ばれます。
🧲 セルフシールドアーク溶接の概要
項目 | 内容 |
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英語名 | Self-Shielded Flux-Cored Arc Welding(FCAW-S) |
溶接方法番号 | 114(ISO 4063) |
シールド方法 | 外部ガス不要。ワイヤ内部のフラックスから保護ガス・スラグを発生 |
使用機器 | 半自動溶接機、フラックス入りワイヤ、トーチ |
適用材料 | 炭素鋼、低合金鋼(主に構造用鋼材) |
用途 | 建築鉄骨、橋梁、造船、野外工事、補修工事など |
🌟 特長とメリット
特長 | 内容 |
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✅ 外部ガス不要 | 屋外・風のある現場でも使用可(MIGやMAGのようにガスが風で飛ばない) |
✅ 高い施工性 | 野外、狭所、高所などで取り扱いが容易 |
✅ 高能率 | 高い溶着速度、厚板溶接に向く |
✅ 自動化適用も可能 | 条件によっては機械化・ロボット化も対応可(鉄骨工場など) |
⚠️ デメリットと注意点
デメリット | 内容 |
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❌ スパッタ多め | 被覆アーク溶接やガスシールド式に比べスパッタが多い傾向 |
❌ ヒューム発生 | ヒューム(煙)が多く、防塵・換気対策が必要 |
❌ 外観性は中程度 | スラグ除去が必要で、美観はTIG等より劣る |
❌ 特殊鋼には不向き | ステンレスやアルミには一般的に使われない |
🛠 使用例
分野 | 使用例 |
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建設現場 | 鉄骨柱の現場溶接、橋梁建設 |
造船・港湾 | 補修溶接、船体構造 |
インフラ保守 | パイプライン補修、鉄塔、ガードレール |
林業・農業機械 | 補修や改造の現場作業 |
🔍 比較:ガスシールドFCAWとの違い
項目 | FCAW-S(セルフ) | FCAW-G(ガスシールド) |
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外部ガス | 不要 ✅ | 必要(CO₂または混合ガス)❌ |
屋外対応 | 非常に強い ✅ | 風に弱い ❌ |
ヒューム | 多め ❌ | 比較的少なめ |
スラグ | あり | あり(が少なめのタイプも) |
溶接品質 | やや粗め | 安定性が高い |
🧾 適用規格とWPS
セルフシールドアーク溶接を使う際も、WPS(溶接施工要領書)とWPQR(施工試験)が必要です。
- WPS作成にはISO 15609-1
- 溶接承認にはISO 15614-1(アーク溶接による溶接施工試験)
また、JIS規格でも例えば次のようなワイヤ規格があります:
- JIS Z 3253:フラックス入りワイヤ(セルフシールド含む)
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | セルフシールドアーク溶接(FCAW-S) |
溶接法番号 | 114(ISO 4063) |
特長 | 外部ガス不要、高能率、屋外向き |
用途 | 建築、橋梁、補修、野外構造物 |
注意点 | ヒューム多い、スパッタ多め、スラグ除去必要 |
関連規格 | ISO 15607, 15609-1, 15614-1, JIS Z 3253 |