「パウダ切断(Powder Cutting)」は、酸素-燃料ガスによるガス切断(火口切断)の一種で、通常の酸素切断では困難な金属(ステンレス鋼、銅、鋳鉄など)を金属粉末(パウダー)を補助的に吹き付けながら切断する方法です。
🔥 パウダ切断とは?
🔹 概要
パウダ切断とは:
切断不可能な金属や酸化生成物が切断を妨げる材料に対し、鉄粉やアルミ粉などを酸素流とともに吹き付けて、強制的に酸化熱を発生させて切断する方法。
⚙️ 原理
通常の酸素切断では、鉄など酸化熱によって連続的に溶ける材料が対象です。しかし、以下のような材料は切断困難です:
- ステンレス鋼(酸化クロム形成で切断が止まる)
- 銅・黄銅(酸化熱が低い)
- 鋳鉄(炭素含有量が高く溶けやすい)
そこで、鉄粉などを酸素流で燃焼させ、高温で局所的に熱源を増強して切断を可能にします。
🧪 使用するパウダー
粉末材質 | 特徴と使用理由 |
---|---|
鉄粉(Fe) | 最も一般的。酸化熱が高く、広く使用される。 |
アルミ粉(Al) | より高温な酸化熱源として使用されることがある。 |
マグネシウム粉(Mg) | 強力だが危険性が高く、限定用途。 |
これらの粉末は、トーチの横に専用ノズルを設けて供給し、切断酸素流に同時噴射されます。
🛠 必要な装置と条件
装置 | 概要 |
---|---|
パウダ切断用トーチ | 通常のガス切断トーチに、パウダ供給ノズルを追加した構造。 |
パウダ供給装置 | 鉄粉などを一定量・圧力で供給。エアまたは酸素駆動が主。 |
酸素・燃料ガス | アセチレン・プロパンなどの可燃性ガスを使用。 |
圧縮空気または搬送ガス | パウダ搬送に使用(窒素または酸素) |
🔧 適用材料
材料 | 通常切断 | パウダ切断 |
---|---|---|
炭素鋼 | ◎ | △(不要) |
ステンレス鋼 | × | ◎ |
銅・真鍮 | × | ○ |
鋳鉄 | × | ○ |
アルミニウム | × | ×(一般に不可) |
📋 特徴・メリット・デメリット
✅ メリット
- ステンレス鋼や鋳鉄など通常ガス切断できない材料に対応
- 設備が簡便で、火口切断機の延長で使える
- 厚板(例:10〜100mm)にも対応可
❌ デメリット
- 粉末の管理や供給装置が必要で運用が複雑
- 作業環境に粉塵や煙が多く発生(安全管理が必要)
- 切断面の品質は粗め(後処理が必要なことが多い)
- 精密切断には不向き
🔍 パウダ切断の例(ステンレス鋼)
項目 | 条件例 |
---|---|
材質 | SUS304 |
板厚 | 25mm |
酸素圧力 | 0.5〜0.7 MPa |
アセチレン圧力 | 0.02〜0.05 MPa |
鉄粉供給量 | 2〜4 kg/h |
切断速度 | 80〜150 mm/min |
🚧 安全上の注意
- 鉄粉は酸素中で燃焼性が高く、火災・爆発の危険がある
- 粉塵対策として集塵装置、保護具、換気が必須
- マグネシウム粉などは非常に反応性が高く、使用には厳重な管理が必要
🧭 パウダ切断が適している場面
用途 | 理由 |
---|---|
ステンレス鋼の構造物解体 | 溶断が困難なため |
鋳物の補修・切断 | 通常火口で切れない |
厚板異種金属の切断 | 一部にステンレスや銅を含む場合 |
重機・建築・解体工事 | 屋外でも使用可、汎用性高い |
✅ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | パウダ切断(Powder Cutting) |
切断対象 | ステンレス、鋳鉄、銅など |
原理 | 金属粉を酸素で燃焼し、酸化熱で切断 |
使用粉末 | 主に鉄粉、アルミ粉 |
メリット | 通常切断不可の材料に対応、高温熱源 |
デメリット | 粉塵・安全管理、仕上がり粗め |