🧪 浸透探傷試験(PT)とは?
浸透探傷試験(PT)は、材料表面の微細な割れやキズを検出するための非破壊検査(NDT)方法です。
材料表面に浸透性の高い液体(浸透液)を塗布し、表面の欠陥に浸透させた後、余分な液体を除去し、現像剤を使って浸透液を引き出すことで欠陥の位置を可視化します。
📌 主な特長と用途
項目 | 内容 |
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対象材料 | 金属・非金属(非磁性体を含む)すべて |
検出対象 | 開口している表面欠陥(クラック、ピンホールなど) |
特長 | 非磁性体・複雑形状にも適用可。微細な欠陥も検出可能。 |
限界 | 欠陥が表面に開いている必要がある(密閉・内部欠陥は不可) |
🧬 原理(仕組み)
- 表面に開口している微細な欠陥に、毛細管現象で浸透液が入り込む
- 表面を清掃・乾燥し、現像剤(白色粉末など)を塗布
- 現像剤が浸透液を欠陥から吸い出す
- 表面に赤色や蛍光の浸透液がにじみ出て、欠陥が見える
🔧 使用する材料と道具
材料 | 用途 |
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浸透液(Penetrant) | 欠陥内部に浸透する色付きまたは蛍光性の液体 |
除去剤(Remover) | 表面の余分な浸透液を除去する(溶剤または水) |
現像剤(Developer) | 浸透液を吸い出して視認性を高める(白色粉末) |
紫外線ランプ(UV) | 蛍光浸透液を使用する場合の検出用光源 |
清掃道具 | 脱脂、前処理、後処理に必要な布、洗剤など |
📋 検査の基本手順(標準6工程)
手順 | 説明 |
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① 前処理(洗浄・脱脂) | 油・汚れ・酸化膜を除去。洗浄が不十分だと検出感度が大きく低下。 |
② 浸透処理(浸透液の塗布) | 浸透液をスプレー、刷毛、浸漬などで塗布。5〜30分放置(製品・温度による)。 |
③ 除去処理 | 表面の余分な浸透液を除去。ピンホールの中には残すよう注意。 |
④ 現像処理 | 白色の現像剤を塗布。毛細管現象により欠陥内の浸透液がにじみ出る。 |
⑤ 観察・評価 | 可視光またはUV光(蛍光PT)で検査。模様やにじみを観察し判定。 |
⑥ 後処理 | 現像剤を除去。必要に応じて防錆処理なども実施。 |
🧫 浸透液の種類と分類
浸透液の表示(例:JIS Z 2343-1、ISO 3452)
分類 | 種類 | 特徴 |
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感度区分 | レベル1〜4 | 感度レベル4が最も高い(航空・宇宙向け) |
表示方法 | 着色(可視)/蛍光 | 可視:赤色、蛍光:UVで黄緑色に発光 |
除去法 | 水洗/溶剤/乳化 | 使用環境や被検査物に応じて選定 |
🧠 検出可能な欠陥例
欠陥 | 説明 |
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表面クラック | 疲労、応力腐食、焼き割れなどによる微細な亀裂 |
ピンホール | 溶接部などにできる小さな貫通孔 |
ポロシティ | 表面開口しているガス孔や気泡 |
鍛造・鋳造欠陥 | 表面に開いた巻き込みや折れ |
⚠️ 注意点と制限事項
項目 | 内容 |
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欠陥の条件 | 表面に開口している必要あり(密閉内部の欠陥は検出不可) |
表面処理 | 塗装、酸化皮膜、焼け皮などは前処理で除去が必要 |
吸収性素材 | 多孔質な材質(鋳鉄など)は誤検出の恐れあり |
温度管理 | 使用温度範囲は通常10〜50℃。極端な温度では感度低下の可能性 |
📏 判定基準(例)
- 表示の形状・大きさ・分布に基づき、JISやASME等の規格で合否判定
- 表示の幅・長さ・個数、集中性(集まっているかどうか)で判定
- 例:JIS Z 2343-3、ASTM E1417、ASME Vなど
🎓 検査員の資格
資格名 | 内容 |
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JIS Z 2305:PTレベル1~3 | 日本国内の非破壊検査技術者認証制度(ISO 9712準拠) |
ISO 9712国際認証 | 海外案件・国際品質保証に対応 |
民間・業界認証 | 航空・原子力・自動車分野では専用の資格制度もあり |
🧭 適用例(使用分野)
分野 | 具体例 |
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溶接構造物 | 表面クラック、開口欠陥のチェック |
航空・自動車 | エンジン部品や回転機械の点検 |
原子力・圧力容器 | 高信頼性構造の定期点検 |
金型・工具 | 製造中の割れやピンホールの検出 |
✅ まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | 浸透探傷試験(PT) |
原理 | 浸透液が欠陥に入り → 現像剤で吸出 → 表示として観察 |
対象材料 | 金属・非金属(非磁性体も可) |
欠陥の種類 | 表面開口欠陥(割れ、ピンホールなど) |
特長 | 微細な割れも可視化、簡便で感度高い |
限界 | 表面開口していない欠陥は検出不可 |