🧲 磁粉探傷試験(MT)とは?
磁粉探傷試験(MT)は、強磁性体(鉄やニッケル、コバルトなど)に磁場をかけて、表面および表面直下の欠陥を可視化する非破壊検査方法です。
欠陥のある場所では磁束が漏れ出す(漏洩磁束)ため、そこに散布した磁粉が吸着して集まり、欠陥が可視化されます。
📌 主な目的と特長
項目 | 内容 |
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対象材料 | 強磁性体のみ(鉄鋼、鋳鉄など) |
検出対象 | 表面および浅い内部の割れやキズ(1mm程度) |
方法 | 磁化 → 磁粉塗布 → 欠陥による磁粉の集まり観察 |
特長 | 表面割れ検出に非常に優れ、比較的簡便かつ高感度 |
🧪 原理(仕組み)
- 検査対象に磁場を印加(磁化)
- 割れなどの不連続部位で磁束が漏洩(漏洩磁束)
- 漏洩磁束の周辺に磁粉を撒布
- 磁粉が吸着・集積 → 欠陥位置が可視化される
![簡略図のイメージ:磁化された鋼材に磁粉を撒いて割れが可視化される様子(画像は省略)]
🔧 検査の種類(磁化方法)
方法 | 説明 | 用途 |
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直接磁化法 | 電極を部材に直接接触させ、電流を流して磁化 | 部材が導電性で形状が単純な場合 |
間接磁化法 | コイルや電磁ヨークを使って外部から磁化 | 複雑形状や非導電体を含む構造物 |
ヨーク法 | ポータブルな磁化機で局部的に磁場を印加 | 現場検査・狭い場所で便利 |
リング磁化 | 内部にコイルを挿入して円周方向に磁化 | ボルトやパイプ内部の欠陥検出に有効 |
🧴 磁粉の種類と使用法
種類 | 特徴 | 用途 |
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乾式磁粉 | 粉末のまま散布。粗い表面や暗所向き | 屋外、鋳物など |
湿式磁粉 | 油または水に磁粉を混ぜてスプレー塗布 | 精密検査や屋内作業に向く |
蛍光磁粉 | UVライトで発光し、微細な欠陥が見えやすい | 高感度検査(航空・車両部品など) |
着色磁粉(赤・黒) | 目視で見やすく、簡便に使える | 一般製造業や現場検査 |
🧪 検査の手順(基本フロー)
- 前処理(脱脂・洗浄)
→ 油、汚れ、塗膜などを除去し、磁粉が付きやすくする
- 磁化処理(磁場印加)
→ 直接・間接・ヨークなどの方法で磁化
- 磁粉散布
→ 表面に乾式または湿式磁粉を散布
- 観察(目視またはブラックライト)
→ 漏洩磁束がある場所に磁粉が集まり、線状の模様が現れる
- 記録と評価
→ 写真撮影、記録用紙記入など
- 後処理(磁粉除去・脱磁)
→ 磁粉を拭き取り、必要に応じて脱磁処理を実施
✅ 検出できる欠陥例
- 表面割れ(クラック)
- スリット(すき間)
- 焼き割れ
- シュリンク割れ(鋳造時の収縮による)
- 鍛造品・溶接品の表面欠陥
- 熱影響部の微細な割れ
⚠️ 適用上の注意点・限界
項目 | 内容 |
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対象材料 | 強磁性体に限定(アルミやステンレスの多くは不可) |
欠陥の深さ | 基本的には表面または表面直下数mmまでが対象 |
塗装・スケール | 表面に塗膜があると検出力が大幅に低下するため、前処理が重要 |
検査環境 | 湿式や蛍光磁粉は暗室やUVライトが必要な場合もある |
磁化方向 | 欠陥と垂直方向に磁束が流れるよう磁化する必要あり(方向に注意) |
📋 評価基準(参考)
- JIS Z 2320「磁粉探傷試験通則」
- ASMEセクションV
- ISO 9934シリーズ
- 各種製品規格(JIS B、WES、API等)
判定には「欠陥の長さ」「本数」「分布状態」などを規格に照らし合わせて合否を判断します。
🎓 検査員資格(日本国内)
- JIS Z 2305に基づく非破壊試験技術者認証(MTレベル1〜3)
- ISO 9712準拠の国際資格(必要に応じ)
- 民間資格(JIS NDT 技術者、溶接管理技術者など)
🧭 適用例(実際の活用)
分野 | 例 |
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鉄道・航空・自動車 | 車軸、ギア、ボルト、クランクシャフトの微細割れ |
建設・橋梁 | 溶接部の表面割れ、母材の焼き割れ |
製造・重工業 | 鋳物や鍛造品の品質確認 |
原子力・プラント | 高信頼性部材の点検 |
📌 まとめ
項目 | 内容 |
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名称 | 磁粉探傷試験(MT:Magnetic Particle Testing) |
原理 | 磁化 → 漏洩磁束 → 磁粉付着で欠陥を可視化 |
対象 | 強磁性材料(鉄鋼など) |
検出可能欠陥 | 表面および表面直下の割れやキズ |
特長 | 高感度・視認性が高く、簡便な表面検査法 |
限界 | 非磁性金属不可/内部欠陥には不向き |