超音波探傷試験(UT:Ultrasonic Testing)

📡 超音波探傷試験(UT)とは?

超音波探傷試験(UT)は、材料内部に高周波の音波(超音波)を送信し、その反射波を検出して内部の欠陥(割れ・空洞など)を調べる非破壊検査方法です。
金属や非金属などの材料内部の深部の欠陥リアルタイムかつ高精度で検出できます。


🧬 原理(仕組み)

  1. 探触子(プローブ)から材料内部へ超音波を送信(通常2~10MHzの高周波)
  2. 音波が内部の欠陥(界面や空洞)に当たると反射
  3. 反射波を受信・記録し、欠陥の位置や大きさを測定
  4. 波形(Aスコープなど)や映像表示(フェーズドアレイUTなど)で可視化・解析

🔧 試験方法の種類

方法名特徴用途例
直角探傷(縦波)音波を材料に垂直に入射。板厚や裏面の欠陥検出に適す。板材、パイプ
斜角探傷(横波)音波を斜めに入射。溶接部や角部の欠陥に対応。溶接部、T継手
フェーズドアレイUT(PAUT)多素子探触子で超音波を電子的に制御。断面を画像化。高精度検査、可視化解析
TOFD(時間差法)伝播時間の差を利用。き裂の寸法評価が可能。溶接部の高精度測定

🧪 使用機器と材料

機器説明
探傷器超音波の送受信、波形解析(Aスコープやフェーズド表示など)
探触子(プローブ)縦波・横波用、周波数や角度で使い分け
カップリング材超音波を媒介するために必要(油、ジェル、水など)

📋 検査手順(基本の流れ)

  1. 表面の清掃:油・さび・異物を除去
  2. カップリング材の塗布:探触子との密着を良くする
  3. 探傷器のキャリブレーション:標準試験片で距離・感度の調整
  4. 探触子の走査(探傷):材料に沿って移動し、波形をモニター
  5. 欠陥の検出と評価:反射波の位置・高さ・波形で判断
  6. 記録・報告書作成:波形、位置、深さ、寸法を記録

🧠 検出できる欠陥例

欠陥内容
割れ(クラック)応力腐食、熱影響などによる内部き裂
未溶着溶接金属と母材が融合していない部分
スラグ巻き込み溶接中にできた不純物の内包
ブローホールガスなどの気泡が残った空隙
ラミネーション圧延材内部の層状割れ(鋼板など)

📈 表示方式の種類(代表的な3種類)

種類内容
Aスコープ縦軸=反射強度、横軸=音波の到達時間(深さ)
Bスコープ断面の2D表示。深さ方向のイメージが得られる
Cスコープ平面画像表示。欠陥の面積や分布を可視化
Sスコープ(PAUT)フェーズドアレイで得られる断面像(画像診断的)

✅ 特長と利点

項目内容
高感度数mm以下の欠陥も検出可能
深部検査可表面だけでなく材料の深部まで検査可能
即時結果結果がリアルタイムで得られ、迅速な判断が可能
非破壊製品を壊さずに内部検査が可能
適用範囲広鋼材、アルミ、複合材、厚板などに対応

⚠️ 制限・注意点

項目内容
表面状態粗面や塗装面は精度低下(清掃が必要)
材料制限粘弾性や粗構造を持つ材料では減衰が激しい
技術者依存波形の読解・判断に熟練技術が必要
死角曲面部や端部など、音が届きにくい位置がある
キャリブレーション検査ごとに適切な標準片での校正が必要

🧭 適用例(産業分野)

分野適用箇所
建設・橋梁溶接部、厚板の内部欠陥検査
発電プラントボイラー、タービン部品の健全性確認
航空・宇宙複合材・軽合金の欠陥検出
自動車・鉄道シャフト・車軸・ホイールの内部探傷
石油・化学配管、圧力容器、タンクなど

📏 判定基準(代表的なもの)

  • JIS Z 3060(鋼溶接部の超音波探傷方法)
  • ASME Sec.V Article 4(UTの標準手順)
  • AWS D1.1, ISO 17640 など
  • 評価項目:欠陥の高さ、深さ、位置、エコー高さ(dB)など

🎓 技術者資格(日本国内)

資格名内容
JIS Z 2305 UTレベル1~3ISO 9712に準拠したUT検査技術者認証
NDI/NDIS資格航空・宇宙産業向け(民間団体)
ASNT SNT-TC-1Aアメリカの訓練資格制度(海外プラント向け)

📁 必要ならご提供可能な資料

  • ✅ UT探傷手順書の雛形(日本語・英語)
  • ✅ Aスコープ波形の読み方資料
  • ✅ JIS Z 3060に基づく合否判定基準
  • ✅ PAUT/TOFDと従来UTの比較表

🧾 まとめ

項目内容
試験名超音波探傷試験(UT:Ultrasonic Testing)
主な目的材料内部の欠陥を検出
使用波縦波、横波、表面波など(2〜10MHz)
表示法Aスコープ、Bスコープ、PAUT(断面像)など
適用材料金属、非金属、複合材(均質で密な材質が良好)
欠陥検出割れ、未溶着、スラグ、ラミネーションなど
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