ISO 15609-1:2000（JIS Z 3421-1）は、アーク溶接に関する溶接施工要領書（WPS）の記載内容を定めた国際規格（およびJIS規格）です。
🔧 規格の正式名称
- ISO 15609-1:2000
Specification and qualification of welding procedures for metallic materials – Welding procedure specification – Part 1: Arc welding - JIS Z 3421-1
金属材料の溶接施工要領の検定―溶接施工要領書―第1部：アーク溶接
🎯 規格の目的
この規格は、アーク溶接におけるWPS（Welding Procedure Specification: 溶接施工要領書）に記載すべき項目と形式を標準化することを目的としています。
- 各種アーク溶接法（被覆アーク溶接、TIG、MIG/MAG、サブマージアークなど）に対応。
- 品質確保、再現性確保、トレーサビリティのための指針を提供。
📄 WPS（溶接施工要領書）に必要な記載項目（抜粋）
規格では、WPSに記載する必要がある情報を具体的に示しています。主な内容は以下のとおりです：
1. 溶接プロセス
- 例：111（被覆アーク溶接）、135（MAG）、141（TIG）など
2. 母材情報
- 材料の種類、記号、規格番号（例：S355、SS400など）
- 板厚、パイプ径など
3. 継手の形状と寸法
- ルート間隔、開先角度、突合せ／隅肉の種別
4. 溶接位置
- PA（下向き）、PB（水平）、PC（横向き）などのISOポジション記号
5. 溶接材料
- 使用する溶接棒／ワイヤ／フラックスの種類、規格、記号
6. 予熱・中間温度・後熱
- 必要に応じて、温度条件と方法を記載
7. 電流・電圧・速度
- 各層ごとの溶接条件（例：1パス目＝130A/24V）
8. 層構成（パス数）
- 根本層、充填層、仕上げ層などのパス構成
9. ガス保護条件（必要に応じて）
- 使用ガス（例：Ar+CO₂）、流量（例：15L/min）
10. 備考・特記事項
- 特殊工程、補助材の使用、溶接順序の制限など
📚 WPS記載例（簡略版）
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 溶接方法 | 135（MAG溶接） |
| 母材 | SS400, t=12mm |
| 開先形状 | V開先、開先角度60° |
| 溶接姿勢 | PA（下向き） |
| 電流・電圧 | 180A / 24V |
| 溶接材料 | YGW12（JIS Z 3312） |
| シールドガス | Ar+20%CO₂, 15L/min |
📎 ISO 15609-1が必要とされる場面
- 品質マネジメント（ISO 3834との連携）
- 船舶、鉄骨、橋梁、圧力容器などの製造
- 第三者検査機関（船級、国交省、鉄道、建築基準）への提出資料
- 国際取引（海外向け製品や外注時）
✅ ISO 15609シリーズとの関係
この規格は以下のシリーズの一部です：
| 規格 | 内容 |
|---|---|
| ISO 15607 | 溶接施工要領の承認の一般原則（親規格） |
| ISO 15609-1 | アーク溶接のWPS記載内容 ← 今回の主題 |
| ISO 15609-2 | ガス溶接のWPS |
| ISO 15609-3 | 抵抗溶接のWPS |
| ISO 15609-4 | レーザ溶接のWPS |
🧭 まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規格名 | ISO 15609-1:2000（JIS Z 3421-1） |
| 主題 | アーク溶接の溶接施工要領書（WPS）記載内容 |
| 目的 | WPSの統一的な記述と管理による品質保証 |
| 主な内容 | 溶接法、母材、姿勢、溶接条件、材料、保護ガス等 |
| 関連規格 | ISO 15607（一般原則）、ISO 15614（承認試験）など |
