ステンレス鋼

金属の特性

ステンレス鋼

  • ステンレス鋼はJISでは「約10.5%以上のCrを含む耐食性を向上させた鋼」と規定されている
  • ステンレス鋼は基本成分からはFe-Cr系とFe-Cr-Ni系に大別され、金属組織上からはFe-Cr系はフェライト系とマルテンサイト系に、 Fe-Cr-Ni系はオーステナイト系、二層系および析出硬化系に分けられる
  • フェライト単層である18%Cr鋼に、Niを添加していくと、オーステナイト相の安定な領域が広がり、8%の添加により最終熱処理の温度域1,000-1,100℃でオーステナイト単層となる
  • ただし、18%Cr-8%Niステンレス鋼のオーステナイト相は準安定である
  • これに対し、Ni保有量の多いFe-Cr-Ni系ステンレス鋼では、融点直下や常温でもオーステナイト相が安定となる
  • また、フェライト相とオーステナイト相の両方が共存するCr、Niの範囲があり、その比率がおおむね1:1となる鋼が二層ステンレス鋼である
  • 実用鋼は耐食性や耐熱性を向上させるために多くの元素が添加された、様々な特徴を有する多くの鋼種に分化している
  • それらの代表例として、オーステナイト系ではSUS304が、フェライト系ではSUS430が、マルテンサイト系ではSUS410がそれぞれあげられる

  

オーステナイト系ステンレス鋼SUS304のアーク溶接

  • 溶接時の熱影響部では約500-850℃に加熱される時間が長くなるほどCr炭化物が結晶粒界に析出し、粒界近郊のCr固溶濃度が低下するため、耐食性が劣化する
  • 上記劣化が発生した場合、これを回復するためには、1000-1100℃に加熱し、析出した炭化物をオーステナイト中に固溶させた後、急冷する、いわゆる固有化(液体化)熱処理を施す
  • 劣化を生じない、または最小限にするためには、
    ⇒溶接入熱を小さくする
    ⇒水冷しながら溶接し、Cr炭化物が析出しやすい鋭敏化温度域の冷却を早くする
    ⇒0.003%C以下の低炭素ステンレス鋼を使用する
    Ti(チタニウム)、Nb(ニオブ)などを添加した安定化ステンレス鋼を使用する
  • 応力腐食割れは引張応力のもとで、塩素イオンの存在する環境中などにさらされた場合に発生する

詳細

ステンレス鋼(Stainless Steel)は、サビにくく、強度や耐熱性、加工性にも優れた鋼材で、建築・機械・食品・医療など幅広い分野で使われています。以下にわかりやすく解説します。


✅ ステンレス鋼とは?

クロム(Cr)を10.5%以上含有した耐食性の高い合金鋼

クロムが酸素と反応してできる**「不動態皮膜(酸化皮膜)」**が表面を覆い、サビを防ぎます。


🧪 主な成分

元素役割
Cr(クロム)不動態皮膜を形成し、耐食性を向上
Ni(ニッケル)光沢・靱性・加工性・耐酸性の向上
Mo(モリブデン)塩害・酸への耐食性向上(特に海水)
C(炭素)強度と硬度を高めるが、多すぎると耐食性低下

🧭 ステンレス鋼の主な分類(組織別)

種類特徴代表鋼種用途例
オーステナイト系非磁性、加工性・耐食性◎SUS304, SUS316調理器具、配管、建材
フェライト系磁性あり、熱伝導◎、コスト低SUS430家電、内装部材
マルテンサイト系高強度、焼入れ可、耐摩耗性SUS410刃物、工具、バルブ
二相系(デュプレックス)オーステナイト+フェライトの複合SUS329J4Lなど海洋構造物、化学装置

🔧 特徴と利点

特徴内容
耐食性水・空気・酸・塩に強い(種類により差あり)
耐熱性高温でも強度や酸化耐性を保持
衛生性表面がなめらかで細菌がつきにくく洗いやすい
加工性曲げ・溶接・研磨などの加工に適している
強度炭素鋼より高いものも多い

⚠️ 注意点

弱点内容
塩素に弱い次亜塩素酸や海水での腐食に注意(耐塩タイプを選ぶ)
高価普通鋼より単価が高い
応力腐食割れ(SCC)特定環境下で割れを起こす場合がある

🏗️ 主な用途例

分野用途例
建築外装材、手すり、屋根、ファサード
食品設備タンク、調理台、配管
医療手術器具、洗浄装置
化学工業反応塔、熱交換器
日用品フライパン、シンク、魔法瓶

🔄 代表鋼種の比較

鋼種特徴用途
SUS304一般用途に広く使用される万能型台所、建材、家具など
SUS316Mo添加で塩水・薬品にも強い医療機器、海水配管など
SUS430安価・磁性あり家電、内装パネルなど
SUS410焼入れできるナイフ、シャフト、ボルトなど

✅ まとめ

項目内容
正式名ステンレス鋼(不錆鋼)
主成分鉄 + クロム(10.5%以上)+他
特徴耐食性・強度・加工性・衛生性に優れる
主な種類オーステナイト系・フェライト系・他
主な用途建材、機械、医療、食品、家庭など多岐にわたる
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