T継手とは、二つの鋼材(主に板や形鋼など)を、垂直に交差するようにT字型に接合する溶接継手の形式です。一方の部材の側面に対して、もう一方の部材を直角に当てて、T字型になるように接合するため、「T継手」と呼ばれます。
図示すると以下のような形です(上から見た例):
---- ← 水平部材(母材)
|
| ← 垂直部材(突き当て材)
■ 用途と特徴
◉ 用途
T継手は以下のような場面で広く使われます:
- 建築構造物(鉄骨の柱と梁など)
- 桁と柱の交差部
- 各種機械フレームの接合
- 造船・車両・橋梁などの構造部品
◉ 特徴
- 構造的に重要な継手として使われることが多く、高強度を要求される。
- 突き当てる部材の位置や溶接部の形状により、様々な溶接方法が選ばれる。
- 応力の集中が起きやすく、疲労や割れに注意が必要。
■ 溶接方法
T継手では、以下のような溶接方法が採用されます:
1. 隅肉溶接(すみみつようせつ)
T継手で最も一般的なのが隅肉溶接(fillet weld)です。部材の交差部分に三角形状の溶接ビードを施します。
- 利点:施工が比較的容易で、コストが低い。
- 欠点:応力集中が起きやすく、過大な荷重には注意。
2. 部分溶込み溶接
溶接部の一部までしか溶け込ませない溶接法。隅肉溶接に近いが、より深く強度のある継手が得られます。
3. 完全溶込み溶接(完全溶透溶接)
突き合わせ部に開先を設け、深くまで溶接金属が浸透する方式。
- 利点:高い強度と疲労耐久性が得られる。
- 欠点:加工・溶接時間が長く、技術も必要。
■ T継手の代表的な形状と記号(JIS)
JIS(日本工業規格)では、T継手は以下のような形状と記号で分類されます:
継手形式 | 概要 |
---|---|
TF継手 | 一方向の隅肉溶接(片側) |
TFB継手 | 両側隅肉溶接 |
TC継手 | 突合せ溶接を含むT継手 |
TP継手 | プラグ溶接やスロット溶接を含む |
■ T継手の強度・注意点
◉ 応力分布
T継手では、垂直に当たる部材が引張・圧縮・せん断などの力を受けることが多く、溶接部に多軸応力が生じます。そのため、次の点に注意が必要です:
- ルート割れ・ビード下割れの防止
- 余盛(すみ肉サイズ)を適切に
- 非破壊検査による品質保証
◉ 歪み・ひずみ
T継手は非対称形になりやすいため、溶接時の熱による変形や残留応力にも注意が必要です。対策としては、
- 両側対称溶接
- 溶接順序の工夫
- プレヒートや後熱処理の検討
などが挙げられます。
■ まとめ
T継手は、構造的に非常に重要な溶接継手であり、主に「部材の一方を他方の側面に直角に接合する」場面で使用されます。主に隅肉溶接が多用されますが、応力の集中や溶接欠陥への注意が必要であり、強度や用途に応じて完全溶込み溶接なども検討されます。設計・施工にあたっては、適切な溶接方法の選定と、品質管理が極めて重要です。